女性のADHDが増えている、もう「男の子の障害」ではない、男性と違う特徴で診断遅れがちに
DVのリスクは5倍、自殺未遂のリスクは7倍という研究結果も、適切な診断と支援を、SNSは誤解のもとにも
人の誕生日を覚えていなかったり、仕事の会議に出るのを忘れたり、クレジットカードの返済を管理できなかったり。たびたびそんなことのあるラチ・イドウさんは、22歳だったにもかかわらず、自分は認知症に違いないと思い始めた。ネットで検索してみると、確かに若年性認知症の可能性がありそうだった。しかし医師に相談すると、すぐに否定された。それから4年かけて2人の精神科医を受診した末、ようやく注意欠如・多動症(ADHD)の診断が下された。 「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 すると突然、それまで自分の人生に起こっていたことのすべてが腑に落ちたという。子どもの頃いつもそわそわしていたこと、宿題を終わらせるためにカフェインを取りながら徹夜したこと、友達からのメールに返信するのに数週間かかっていたことなど。「目からうろこが落ちました」と、現在は29歳になったイドウさんは振り返る。 イドウさんだけではない。大人になってからADHDの診断を受ける女性または出生時に女性の性に割り当てられた人の数は、米国だけでも数百万人にもなる。過去数十年間、ADHDと診断される成人女性は増加傾向にあったうえ、1億8000万人以上の医療データベースを使った統計によると、米国では2020~2022年の間に急増し、23~49歳の女性では2倍近くに増えているという(編注:日本では2010~19 年にかけてADHDの年間発生率が急増し、なかでも20歳以上の女性が22.3倍で最も高かったという調査結果がある)。
女性のADHDの特徴
ADHDには、多動性・衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型の3つのタイプがある。女の子や女性に多い不注意優勢型は、整理整頓が苦手、忘れっぽい、仕事を始めたり続けたりするのが苦手といった特徴を持つ。 「夢想家だとか、いつもぼんやりしているなどと言われがちです」と話すのは、米デューク大学女性・女子ADHDセンターの共同センター長を務めるジュリア・シェクター氏だ。 多動性・衝動性優勢型や混合型であっても、女性の場合、おしゃべり、髪の毛をいじる、貧乏ゆすり、他人の感情にとても敏感など、男の子とは異なった症状を示すことが多い。「本人にしてみたら大変なことに変わりはありません。ただ気づかれにくいだけなのです」