女性のADHDが増えている、もう「男の子の障害」ではない、男性と違う特徴で診断遅れがちに
実行する機能の障害
ADHDとは、実行する機能の障害と言える。計画を立てる能力や、脳のワーキングメモリ、感情の調節など、個人が活動する能力をつかさどる精神機能がうまく働いていないのだ。 女性が大人になるにつれて、実行機能が要求されるような場面が増えると、ADHDの症状はますますわかりにくくなる可能性がある。多動は、落ち着きのなさに紛れ込み、注意欠如は、家事を終わらせられなかったり、締め切りを守れなかったりといった問題に見え、そして衝動性は予算管理能力の問題として現れることがある。 にもかかわらず、多くのADHDを持つ女性は、外面的には何でもできる完璧主義者に見られがちだ。しかし、診断されなかったり間違った診断を下されたりすると、深刻な結果につながることもある。 不安症や抑うつ、薬物依存、摂食障害などに苦しむADHDの女性は多い。また、DVを経験するリスクは5倍、自殺未遂のリスクは7倍、計画外の妊娠や若年での妊娠率も高い。 2015年に医学誌「The Lancet」に発表されたデンマークでの研究によると、ADHDの女性は、ADHDの男性に比べて早死にするリスクが2倍以上であるという。診断され、治療を受ける女性が少ないせいかもしれない。
TikTokの人気動画上位の半分が誤解を招く内容
最近ではソーシャルメディアで話題になることも多くなり、成人女性のADHDに対する認識は広まっている。しかし、そのせいで障害の深刻さが薄められてしまったとも、シェクター氏は指摘する。 2022年2月に医学誌「The Canadian Journal of Psychiatry」に発表されたカナダでの研究によると、ADHDを取り上げたTikTokの人気動画上位100本のうち、半分が誤解を招く内容だった。 「ADHDは、時々鍵をなくすというような障害ではありません」と、シェクター氏は指摘する。「ADHDをソーシャルメディアの投稿に切り詰めてしまうと、本当の機能障害というものが何なのかが見失われてしまいます」 また、パンデミックやリモート勤務、ソーシャルメディアを見る時間が増えたことなどで以前よりも注意散漫になったというだけでは、ADHDと診断するほどではないと、専門家たちは強調する。 「在宅勤務だと集中できないとか、携帯電話に気を取られてしまうとか、テレビがついていたら宿題ができないからといって、ADHDがあるわけではありません」と、シェクター氏は言う。「専門家は、様々な時や場面において現れる一定の症状や問題を見極めます」