不治の病とされた「慢性腎臓病」が近年<治せる病>に?専門医「かつての常識では、腎臓病になった後に体を動かすのはもってのほかだったが…」
◆歩き始めて3ヵ月で…… Tさん(70歳・男性)は、高血圧と脂質異常症の持病があり、59歳のときに脳梗塞(脳の血管が詰まって起こる病気)の発作を起こしました。 このときの検査で、腎機能値がかなり低下していることが判明。eGFRの値は50 であり、健常者の半分しか腎機能が働いていませんでした。 医師からは、「このまま腎機能が低下していけば、将来的には人工透析の導入も考えなくてはいけない」と警告されました。 Tさんは熱心にウォーキングに取り組むようになり、1日に2万5000歩をゆっくり歩くようになりました。 歩き始めて3ヵ月で、慢性腎臓病のステージがG3aからG2へと回復し、eGFR値も基準値の60まで戻しました。体重は、ピーク時の80kgから12kg減り68kgになったのです。 それまでは降圧剤を飲んでも、最大血圧が140~160mmHg、最小血圧が90mmHgまでしか下がりませんでしたが、最大血圧120mmHg台、最小血圧60mmHgまで下がりました(正常値は最大血圧が140mmHg未満、最小血圧90mmHg未満)。
◆運動療法は有効な手段 Kさん(65歳・男性)は、長年患ってきた糖尿病の悪化により、腎機能も低下し、糖尿病腎症を発症しました。 医師から人工透析を勧められ、始めました。それと並行して、Kさんは運動療法を開始しました。人工透析が始まる前にエアロバイクなどで体を動かし、ほかに毎日30分のウォーキングや筋トレも実践したのです。 その結果、7%台だったヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖値がわかる数値で、正常値は6.2%未満)が、5.5%と正常値内に落ち着きました。 血圧は、最大血圧が160mmHg台、最小血圧が90mmHg台だったものが、最大血圧が120~130mmHg、最小血圧が70mm Hg 台まで下がり、安定するようになったのです。 人工透析を始めると、足腰が弱って、車イスが必要になる人も少なくありません。しかし、運動療法をしっかり続けているKさんは、足腰の衰えも感じず、腎機能もよい状態で推移しています。 このように運動は、落ちてしまった腎機能を回復させたり、今の状態をキープしたりするための有力な手段となります。 人工透析を受けることになったとしても、健康状態を維持するのにも役立つことがわかってきています。 ※本稿は、『腎臓の名医が教える 腎機能 自力で強まる体操と食事』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
上月正博
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