不治の病とされた「慢性腎臓病」が近年<治せる病>に?専門医「かつての常識では、腎臓病になった後に体を動かすのはもってのほかだったが…」
◆慢性腎臓病は「治せる病」になりつつある このまま改善せず、人工透析や腎移植を勧められるようになったら、自分の命は助からないのではないのか。 本記事は、腎臓に対するこうした不安や心配を持つ人に向けて、落ちてきた腎機能を可能な限り回復させ、慢性腎臓病の予防や改善の手助けとなる手段を提案します。 医学の研究や治療の進展によって、現在、慢性腎臓病の治療には大きな変化が起きています。 かつては、不治の病とされてきた慢性腎臓病は、「治せる病」になりつつあるのです。慢性腎臓病は、早期に発見して適切な治療やセルフケアを行うことで、改善したり、進行を遅らせたりすることができる病気となりました。 そこで、重要なカギを握るのが「運動」と「食事」です。 特に運動は、少し前までの常識では、いったん腎臓病になったら、安静が第一であり、体を動かすことなどはもってのほかでした。 しかし、今では慢性腎臓病の患者さんが軽い運動を継続することで、元気にいきいきとした生活ができるばかりか、血清クレアチニン値が低下したり、尿たんぱくが減少・消失したり、腎機能が向上することがあることもわかっています。 また、人工透析を回避・先延ばししたり、心臓病や脳卒中などの合併症を予防したり、死亡率が下がって余命が延びたりすることが判明しました。 慢性腎臓病の患者さんであっても、軽い運動を継続することで、体力や気力を保ち、毎日を活発に過ごせるようになるのです。 今ではむしろ、安静は禁物なのです。
◆腎臓リハビリの例 私は、長年、東北大学病院に籍を置き、慢性腎臓病に対する運動がもたらす改善効果について研究を続けてきました。 そこで開発したのが、「腎臓リハビリテーション」(以下、「腎臓リハビリ」)です。 腎臓リハビリを用いた私たちスタッフの研究成果は、今や世界的に認められるようになりました。日本では、このリハビリに健康保険の適用が認められるほどです。 私たちの研究などで、治療方針が、「安静第一から運動推奨へ」と、大きく転換されたのです。 腎臓病の治療において、「コペルニクス的転回」ともいわれるほどの革命が起きたと評価してくださる医師や研究者、医療スタッフも、世界中にたくさんいます。 そうした声も嬉しいのですが、私が何より喜んでいるのは、不安や心配で押しつぶされそうになっていた多くの患者さんが、腎臓リハビリによって生き生きとした毎日を手に入れられたことです。 ここで、そうした例を簡潔にご紹介してみましょう。 Iさん(75歳・女性)は、今から35年前の40歳のとき、慢性腎臓病のステージG3aとの診断を受けました。Iさんは食事にも配慮しながら、運動療法の一環として自分の好きな山歩きを続けました。 現在のeGFRの値は57(基準値は60以上)。ステージこそ変わっていませんが、35年間、さらなる腎機能の低下は起こっていません。 これ自体、すばらしいことです。しかも、以前は見られた血尿は出なくなり、尿たんぱくも出てもごくわずかです。 長年にわたり、根気よく歩き続けてきたことが、Iさんの腎機能の維持に大きく貢献していることは間違いないでしょう。
【関連記事】
- 人類史上で最も長生きした女性が「1週間に1キロ食べた」好物とは…医師「疲れ知らずの体をつくるのに食事の変革は必須」【2024年上半期BEST】
- 起床後1時間以内のタンパク質摂取で、筋肉が衰えるのを防ぐ。朝に食べることで吸収率がアップする食材とは?【2024年上半期BEST】
- 老けない最強食ベスト5!冷凍で栄養価がさらに高くなる野菜とは?冷凍庫に入れる前のひと工夫で、野菜の酸化・老化を防ぐ【2024年上半期BEST】
- 小倉智昭「コレクション用の部屋を畳み、荷物を入れた自宅から妻と義母が出て行き…。一人暮らしで妻との仲がより親密に」【2024年上半期BEST】
- 慢性疲労の裏に隠れているかもしれない<腎臓の劣化>。糖尿病専門医「腎臓が文句を言いだしたときには回復不可能なことも」