なぜ山下良美氏はJリーグ初の女性主審としてJ3のピッチに立ったのか…歴史的1日を語る「大きな責任を感じた」
Jリーグの公式戦で女性として初めて主審を務めた山下良美審判員(35)が17日、日本サッカー協会が主催するオンライン会見に出席。歴史を塗り替えた16日の明治安田生命J3リーグ第8節、Y.S.C.C.横浜-テゲバジャーロ宮崎戦から一夜明けた心境を語った。 ニッパツ三ツ沢球技場で行われた一戦で、山下さんは鶴岡泰樹、眞鍋久大両副審、本多文哉第4審判員とユニットを形成。ペナルティーエリアの外で横浜のFWンドカ・チャールスと接触した、宮崎のGK植田峻佑に開始10分でイエローカードを提示した。 毅然とした山下さんのレフェリングに導かれる形で、その後は両チームによる激しくもクリーンな攻防が展開。前後半に1点ずつを奪った宮崎が2-0で快勝した一戦へ、山下さんは対象が異なる2つの責任感を胸中に秘めながら臨んでいたと明かした。 「試合を担当するに当たって、もちろん(主審として)大きな責任を感じていました。加えて、この機会を得るに当たってJFA(日本サッカー協会)の方々、Jリーグの方々、両チームや選手の方々、そして見ている方々の理解もありますし、同じ仲間のレフェリーが全国のいろいろな舞台で積み上げてきている信頼もありました。そういうものを背負ってこの試合を担わなければいけない、という責任も重く感じていました」 東京都中野区で生まれ育った山下さんは、兄の影響を受けて幼稚園のときにサッカーを始めた。選手としてプレーを続けていたなかで、試合中にピッチの上で同じ時間を共有する主審の存在は「目に入っていませんでした」と申し訳なさそうに笑った。 「一緒に試合をしているはずなのに、言ってみれば私にはまったく興味がないというか、まったく関心がない存在でした。私にはまったく見えていなかったというか」 転機は東京学芸大学在学中に、思いがけない形で訪れた。大学の先輩で、現在は国際審判員を務める坊薗真琴副審から誘われ、選手と並行して審判員への道も歩み始めた。 「坊薗さんに誘われたというか、最初は無理やりやらされたというか。全然気が進まなかったんですけど、とにかくやってみよう、と。そのぐらいの気持ちで始めましたし、最初の試合はキックオフの笛を吹いて、時間を計って、試合終了の笛を吹くことしか考えていなかったんですけど、それを終えるともっとこうしたい、というのが出てきて。試合ごとにそういうものが、どんどん積み重なってきた感じですね」 審判員の仕事にも魅力を感じ始め、2級審判員の資格を取得した際に、社会人チームで続けていた選手との二刀流からひとつに絞った。 「女子のトップリーグに関係できる責任の重さを感じたこともあり、2級審判員になるのであればしっかり審判というものに向き合わなければいけない、という気持ちが芽生えてきました。そこからは審判員の比重が大きくなってきた感じですね」