山下達郎的「一人きりのクリスマスイブ」もはや「ありえない」…!ロボットから考える「マチアプ」恋愛「うまくいく人」「いかない人」の意外すぎる特徴
いつの時代も「恋愛」というテーマは人々を魅了してきた。 しかし、その普遍性とは裏腹に、実際の恋愛を取り巻く環境変化は著しい。 【写真】最新のロボット研究…! マッチングアプリの登場を皮切りに、恋愛における「スペック」重視の傾向は強まるばかりだが、すさまじい勢いでそのスペックを洗練させ続ける「ロボット」に、立ちすくむほかないのがこれからの人間かもしれない。 恋愛とは何か、愛とは何か。それは、人間の「特権」か。 ロボットが人間を「超える」とき、人間には何が残るのか――。 石黒浩『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』、岡田美智男『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』に続く、現代新書〈ロボットシリーズ〉最新章の幕開けか…? 石黒研所属の気鋭のロボット学者・高橋英之氏が、根源的な問いに挑む! ロボットと考える「愛/AI」のかたち 後編 >>まだお読みでない方は、前編「人間の「生々しすぎる」欲望かなえるロボットの実態…!「ヒトの身体を模倣して…」」もぜひお読みください。
恋愛の精神的な「価値」、ロボットに実装できるか
前編では、恋愛の「目に見える価値」を、ロボットに実装できるか詳しく見ていった。ここからは、「目に見えない」価値についても詳しく検討していこう。 これまで述べてきた要素は、恋愛における目にみえる要素であるため、ロボットに実装するべき「機能」の指針が比較的明確で容易であった。 一方、星の王子さまに登場するキツネの有名な台詞で「大切なものは目にはみえないんだよ」というものがある。前述したように、筆者の周りにいる学生の中では、目に見えない精神的な恋愛の価値が語られることもしばしばあった。このような目に見えない要素をロボットに実装することは一見非常に難しいように思える。 しかし現実の問題として、目に見えない部分を意識した恋愛というものは人間同士であっても、とても難しい。 一番分かりやすい人間関係における目に見えない概念として、「信頼」というものがある。信頼とは、何の保証が無くても、相手の想いを信じ続ける姿勢であり、自分と相手の間にある見えない関係性の強さを信じぬく必要がある。 しかし多くの人たちは、相手が自分と会っていないところで心変わりしないか、浮気をしていないか、ついつい不安になってしまう。 携帯電話が普及する前の昭和の時代は、いつでも相手に連絡可能なLINEのような通信手段が存在しなかったため、恋人であっても、お互いが何をやっているのか分からない時間が大半であった。山下達郎の有名な「クリスマスイブ」に「きっと君は来ない、一人きりのクリスマスイブ」という歌詞があるが、相手が来るかどうか不安と信頼が入り混じる感情の中で待つ、というのは昭和の恋愛の醍醐味だったのかもしれない。 来るかどうかも分からない相手を信頼して待ち続ける、というのはLINEなどで常に連絡を取り合っている現代人にはなかなか難しいかもしれない。 しかしロボットは感情の揺らぎも、疲労も、不安もない。 自分の味方として、いつまでも自分のことを待っていてくれる。(浮気をするようなプログラムをわざと仕込んでおかない限り)決してその信頼を裏切ることはない。人間同士の関係性は常に喪失のリスクが付きまとうが、ロボットとの関係性は基本的に、喪失の恐れがない最強の絆と言えるのかもしれない。 SNSでいつでも連絡が取り合える現代においても、人間同士の関係性というものは儚いものであり、昨日まで深い関係にあった二人が、ある日を境に袂を分かつこともしばしばある。 どれだけテクノロジーが進歩したとしても、関係性を喪失する不安から我々は逃れることができない。