山下達郎的「一人きりのクリスマスイブ」もはや「ありえない」…!ロボットから考える「マチアプ」恋愛「うまくいく人」「いかない人」の意外すぎる特徴
「会えない時間」をデザインする
このような話をすると、喪失のリスクがなく、確実に待っていてくれる存在なんて魅力を感じない、と言われることがある。例えば、人間同士であれば、相手と会えない時間の中で、相手への想いが逆に強まることがある。 果たしてロボットはそのような「魅力」を本当に持ち得ないのであろうか。 大阪大学学生の橋川莉乃さんは、保有するぬいぐるみがバーチャル空間の中で独自の人間関係ならぬ、「ぬい関係」を他のぬいぐるみと紡いでいる風景をそのぬいぐるみの所有者に提示するシステムを開発した。そして、このシステムを用いて、自分の保有するぬいぐるみの「ぬい関係」を覗き見することで、持ち主がそのぬいぐるみを撮影する写真が愛情深いものになる、という興味深い研究知見を得ることができた。 ロボットやぬいぐるみであっても、所有者の知らない世界をもっていることで、より強い魅力を感じさせることができるのかもしれない。 むしろ同じ国や文化に属する人間の生きている世界など、一人一人、そこまで大きな違いがないが、人間とは全く異質なロボットであれば、好奇心を喚起するような独自の世界をもっているように人間に感じせることが可能になり、大きな魅力をそこに生み出すことができるかもしれない。
「人生」ならぬ「ぬい生」構想
またロボットのならではの恋愛上の魅力として、自分と相性が良い関係を自由にデザインできるというものがある。 例えば先に述べた調査で、ロボットのような完璧な相手なんて嫌だ、不完全な相手と支え合って生きていきたい、と訴えた学生がいた。しかし、豊橋科学技術大学の岡田美智男先生が提唱する「弱いロボット」は、ロボット単体にあえて自立できない「弱さ」を持たせることで、人間とロボットの相補的で助け合うような関係性をデザインしている。 また大阪大学の学生である大道麻由さんは、ぬいぐるみロボットが独自に生きている人生、ならぬ「ぬい生」の物語を大規模言語モデル(ChatGPT)で創り出し、それにもとづいた相談をそのロボットが人間にしながら、ロボットの物語を紡いでいくシステムを開発した。 具体的には、一定のプロットに従って大規模言語モデルに自由にぬいぐるみロボットの物語を生成させ、その物語に沿って役を演じるように、ロボットにプログラムをする。このようなシステムを用いることで、人間とロボットが共に物語を創り、共有していくことが可能になる。 二人で一つの物語を紡いでいくというのは、人間同士の恋愛でも大切な要素だが、多くの場合、価値観の違いなどで現実的な難しさが発生することを考えると、共に物語を紡いでいく「能力」もロボットの方が優れている可能性がある。 以上のように様々な関係性を人間との間に柔軟に築くことが可能であるということも、ロボットが人間よりも恋愛で優っている点かもしれない。 多くの学生が、人間同士には波長が合う、相性がいいなど見えない関係性の要素がある、と述べていたが、実はロボットの方が人間よりも、「相性の良さ」を追求できるポテンシャルを秘めているのかもしれない。 人間同士の恋愛は、そのような予定調和な「作り物」の関係ではなく、面倒くさかったり、すれ違ったりするから、互いに成長していけるのだといったコメントもあったが、そのような面倒くささや衝突のようなものも、いくらでもロボットに「機能」(例えば5回に1回は人間に反抗するなど)としてプログラムすることが原理的にはできてしまうのが恐ろしい。