じつは、地球にとって「二酸化炭素は悪もの」ではなかった
何度か訪れた雪玉状の地球
約6億年前には、地球全域が氷に覆われ、雪玉のようになったスノーボールアースと呼ばれる時代がありました。 大気中の二酸化炭素が少なくなって寒冷化した時代に、何らかの理由で炭素循環が間に合わないと、氷床がどんどん拡大します。雪や氷は太陽の光を吸収することなく反射してしまうため、凍れば凍るほど寒くなっていくのです。これは変化を加速させて暴走する方向にはたらくメカニズムで、正のフィードバックと呼ばれます。 そのようにして地球全体が氷に覆われた時代があったのです。その時代にいた生物は大打撃を受けましたが、海底や陸上の温泉地帯では生物が細々と生き延びました。地球全体が氷に覆われても火山活動は続き、だんだんと大気中の二酸化炭素の濃度が増えていきました。その二酸化炭素の温室効果によって、地球はスノーボールアース状態から脱出することができたのです。 生き延びた生物は、その後に爆発的な進化を遂げていきました。この時代を生き延びた生物は私たちの祖先でもあります。二酸化炭素はけっして悪ものではなく、適正に循環するかぎり、地球の環境を安定させ、生命にとって住みやすい星にするようはたらいているのです。 ◇ ◇ ◇ 私たち生命にとって欠かすことのできない水。その水を豊富に湛えている海はこれからもずっと存在するのでしょうか。次回は、地球の海の運命を考えてみます。 *こちらの続きは、12月18日(水)公開予定です 水の惑星「地球」 46億年の大循環から地球をみる
片山 郁夫(広島大学大学院 先進理工系科学教授)