じつは、地球にとって「二酸化炭素は悪もの」ではなかった
気候を調整する炭素
大気中の二酸化炭素は強い温室効果をもつため、産業活動による二酸化炭素の放出によって地球温暖化が引き起こされているのはご存じのとおりです。 しかし、気候が暖かくなると風化や侵食が激しくなり、溶け出した岩石成分が海水中の炭酸イオンと結合することで、炭素が鉱物として固定されます。そうすると、大気中の二酸化炭素は鉱物に吸収され、気候はだんだんと寒くなっていきます。 このようにシステムを安定化に向かわせるしくみを、負のフィードバックといいます。炭素循環にも負のフィードバックが働くことで、長期的な気候を調整してきたのです。 さきほどの話だと、炭素が鉱物に吸収されるいっぽうでは、どんどん寒冷化が進んでしまいます。しかし、炭素を含んだ鉱物は、プレートの沈み込みによって地球内部へ運ばれると分解し、火山によって表層へと戻ってきます。そうすると大気中の二酸化炭素が再び増え、温暖化になっていきます。このような巧妙なシステムが地球にはそなわっているのです。 しかし、現在私たちが直面している地球温暖化は、もっと短くそして急激な変化であるため、このシステムが働いてくれるとはいえません。
太陽が暗くても凍らなかった地球
現在の大気中の二酸化炭素濃度は約400ppmくらいで、産業革命前に比べ50%ほど増えています。しかし、地球初期の二酸化炭素濃度は、現在の1000倍以上もあったと考えられています。その強烈な温室効果のおかげで、地球初期から液体の海が存在することができ、生命が進化する表層環境が保たれてきたのです。 太陽の明るさは、その中心での核融合反応によるエネルギーがもとで、どんどん明るさを増しています。つまり、昔の太陽は今よりもずっと暗く、地球ができた46億年前頃は現在の70%くらいの明るさだったと推定されています。そのような条件でも、地球表面で海がある穏やかな環境が保たれたのは、二酸化炭素を多くふくむ大気のおかげなのです。 そして、太陽がしだいに明るくなるにつれ、気候を保とうとする炭素循環の負のフィードバックがはたらき、大気中の二酸化炭素濃度は減り続けてきました。しかし、地球の歴史のなかでは、このしくみが追いつかず極端な環境におちいったことも何度かあります。