仁王門に人気絵本のサンタが登場 作者・谷口智則さんの原画展も開催 大津・三井寺
三井寺(大津市)の仁王門前に、高さ3メートルの巨大なサンタクロースが出現した。絵本作家、谷口智則さん(46)の人気絵本『100にんのサンタクロース』に登場する「おおきいサンタ」のオブジェで、谷口さんがライブペイントした小さなサンタも並び、クリスマスムードを盛り上げている。境内では谷口さんの原画などを集めた作品展が開かれている。12月8日まで。 【写真】ライブペイントで「ベルサンタ」を塗り上げる谷口さん 谷口さんは大阪府四條畷市出身。金沢美術工芸大(日本画専攻)卒業後、平成16年に『サルくんとお月さま』でデビューした。今回の作品展は、絵本作家として今秋で20周年を迎えたのを記念して企画された。 最新作の『かいじゅうのすむしま』を含め、作品はすべて動物が主人公。さまざまな動物を擬人化した「鳥獣人物戯画」に強く魅せられたことが、絵本作家としての原点。黒いキャンバスにアクリル絵の具で表現する独自の技法で、日本画風に描かれた動物たちの世界観は心を揺さぶる。 戯画の名手と伝えられ、「鳥獣人物戯画」の作者説がある鳥羽僧正覚猷(かくゆう)(1053~1140年)が三井寺の長吏(ちょうり)を務めた縁などから、3年前に初めて同寺で作品展を開催。今回は規模を拡大し、絵本の原画や描き下ろしの大型作品など約200点を境内の観音堂書院に並べて展示している。 「鳥獣人物戯画」のような文のない絵本も制作している谷口さんは「動物を人間に置き換えてみると、それぞれのよさがでる。時代が違っても伝えたいことは同じ。古くから物語が根づいている三井寺で、絵の中のストーリーを感じ取ってもらえたら」と話す。 福家俊彦(ふけしゅんげん)長吏は「こういう時代だからこそ、平和や希望のメッセージがいっそう伝わってくる」と感慨深げに作品に見入っていた。 展示初日の11月16日には、谷口さんが仁王門の前でライブペイントを披露。高さ65センチの真っ黒なサンタの造形が、小さい釣鐘のようなベルを持つ「ベルサンタ」に変身し、親子連れらを楽しませていた。 ベルサンタは「弁慶の引き摺り鐘」伝説に寄せて絵本から選ばれ、引き摺り鐘をかぶった三井寺のゆるキャラ「べんべん」がほら貝を吹いて完成を祝った。