漫画の世界から飛び出た親子日本王者「拳四朗」がTKO初防衛
その名も拳四朗。リングネームではない。本名。寺地拳四朗(24)。元日本ミドル級、東洋太平洋ライトヘビー級王者の父親、兼、BMBスポーツジムの会長、寺地永(52)が名づけた。 もちろん人気漫画「北斗の拳」の主人公「ケンシロウ」からとった名前だ。52歳の父は、まさに北斗の拳世代。次男に「強くなれ」の夢を託して、漫画の世界のヒーローから、その名を拝借した。 昨年12月にプロ6戦目で日本ライトフライ級のタイトルを奪った拳四朗が、14日、後楽園ホールで、世界挑戦経験のある同級1位の角谷淳志(30、金沢)を相手に、初防衛戦のリングに立った。1ラウンドに3度のダウンを奪い2分53秒に衝撃TKO勝ち。聖地に衝撃を与えた。 「やりにくい相手。まさか1ラウンドに倒せるとは思っていなかった」。 スタートは硬かった。初防衛戦の緊張なのだろう。実は一度、ガウンを忘れて控え室を出た。 「左ジャブから組み立て右カウンターを狙う」という考えだったが、左フックを合わせられタイミングを崩す。だが、クリンチ際、油断していた相手に左フックを数発を叩き込むと、これがダメージブローに変わる。通常、クリンチの状態で体を抑えられていると、パンチは死ぬものだが、「あそこで打たれるとは想像していなかった」という角谷は面くらった。密着戦でアッパーを放つと、角谷はキャンバスに崩れた。 すぐさま立ち上がったが、拳四朗は、フィニッシュの機を見逃さなかった。 「落ち着いていくかどうか迷ったんですが、行きました」 ベルトを巻く資格を持つための勇気だ。 左フックをヒットさせ、正真正銘のダウンを奪う。 再度、角谷は起き上がってきたが、拳四朗がパンチをまとめると、その勢いに巻き込まれるようにしてよろけてダウン。レフェリーは2分53秒、TKOを宣告した。 敗れた角谷は、控え室で「何もできずに終わった。あんまりに早くて、彼が強いかもわからないまま」と、小さな声でうなだれた。 ベルトを守った拳四朗は、リング上で「おまえはもう終わっている」とは言わずに、「年内に世界を狙いたい」と宣言した。