漫画の世界から飛び出た親子日本王者「拳四朗」がTKO初防衛
重量級に一時代を築いた父は、息子の姿を客観的に見守っている。 どちらかと言えば、北斗の拳の「ケンシロウ」に重なるのは、ガタイのいい父だ。ちなみに親子での日本王者は、野口進ー恭、カシアス内藤ー律樹に続き、3組目である。 「僕とはまったくスタイルが違う。そもそも体型違う。拳四朗は、腕も短いしファイタースタイルでしか活路は見出せない。僕を真似しろという方が無理なんです。息子のいい面を伸ばせばいいと思う」 ーー性格は? 「話をしてもらうとわかると思うんですが、僕なんかよりも、やさしいでしょう。でも二面性があって、闘争心。牙をむく瞬間がある」 一時期、市議として政治活動をしていた父は、そう言って息子の汗をふいた。 拳四朗は、リング上で年内世界挑戦を宣言した。 プロモーターでもある父は、「アピールはできた。チャンスがあればやりたいが、何が何でもというつもりはない。取っても長くもてる力をつけてからでないと。今は東洋太平洋の話も来ている。ただライトフライ級には、日本人世界王者が2人いるので、日本人対決は、注目を浴びるし面白いですよね」と、慎重な姿勢だ。 ライトフライ級には、この27日に防衛戦を控えているWBA世界ライトフライ級王者の田口良一(ワタナベ)、来月8日に初防衛戦のあるIBF同級王者の八重樫東(大橋)と2人の世界王者が君臨している。 それだけにターゲットはリアルだ。 「すべては父に任せている」という拳四朗にどちらとやりたいか?と突っ込むと「田口さんの方がいいですかね。日本人同士だと盛り上がりますかね?」と、田口の名前を出した。 田口とは、何度かスパーリングで拳を重ねていて陣営には確かな勝算があるという。 ただスピード、コンビネーション、カウンター技術、そしてディフェンスも、もうワンランク上げたい。 ーー嫌いだったボクシング。今は、どう? 後援者に囲まれ、騒がしい控え室で、耳元で、そう聞くと「もちろん、好きになってきました」と無邪気に笑顔を返した。可愛い童顔と、リング上の残酷さが強烈なコントラストを描く。世界チャンピオンになれば、その漫画の世界から拝借したリングネームも手伝って人気も出るだろう。 親子のチャンピオン物語は、まだ序章である。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)