「学校は友だちができなくても当然の場所」ヒャダインさんが学校生活に悩む子どもたちに伝えたいこと #今つらいあなたへ
夏休みの終わりを憂うつに感じている子どもたちは多いでしょう。音楽クリエイターのヒャダイン(前山田健一)さんも、かつてその一人でした。学生時代にいじめられた経験もあり、価値観を共有できる友だちは誰もいなかったというヒャダインさん。自身の学生時代を「ずっと曇天だった」と表現する一方で、「無理矢理友だちを作る必要はなかったといまでも思う」と言います。当時の思いと、いま悩む子どもたちに伝えたいメッセージを伺いました。(Yahoo!ニュース Voice)
トイレの個室でお弁当を食べた学生時代。でも、当時の自分は「正しかった」
――ヒャダインさんはどんな子ども時代を過ごしていましたか? ヒャダイン: 小学校の時は、運動神経が全く良くなくてクラスの男子についていくことができませんでした。自分のプライドを保つために、何かひとつ自分の特異性を見つけようと思って、ピアノに打ち込んでいましたね。中学校からは吹奏楽部に入ったんですが、部員が3人ぐらいしかいなくて、ほぼ活動もままならず。放課後は音楽室の鍵をかけて、グランドピアノを1人で好きなだけ弾いていました。 ――いじめに遭った経験もあると伺いました。 ヒャダイン: 小学校6年生の時でした。僕は勉強が楽しすぎて、親にドリルを買ってもらったり、塾に入れてもらったりしていました。学校の勉強もすぐ解けちゃうので、調子に乗っていたんですよね。すると、徐々にクラス全員からシカトされるようになって、僕の気に入っていたドラクエの下敷きをトイレに投げつけられたりしました。 ――どのように対処したのでしょう? ヒャダイン: なるべく我慢してましたね。親に迷惑をかけたくないという気持ちがあったので、言わないようにはしてましたし、恥ずかしいという気持ちもあったんですよね。弱くなった自分を見せたくないというか。結局親には言えずに、僕が学校で泣き出したことで騒ぎになって、学級会が行われて、親にも連絡が行きました。 担任の先生がその騒動で家に来た時に、「そうやって勉強を鼻にかけた前山田くんも悪い」みたいに言われたことを覚えています。「この先生は、僕のことをかばってくれないんだな」と刻み込まれましたね。 ――中学、高校時代は、吹奏楽部以外はどのように過ごしていましたか? ヒャダイン: 友だちは多いほうではなかったですし、クラスの1軍、2軍に入れていない自分がとても恥ずかしい存在だと思っていました。特に昼休みが嫌でしたね。みんなはお弁当をわいわい食べるんですけど、1人で食べていることを見られて「あいつ1人なんだ」と思われるのが嫌で。僕が見つけた職員室の隣のトイレの個室でよくお弁当を食べてましたね。 これを聞いたらすごく悲劇的に聞こえるかもしれないですけど、実は僕としてはめちゃくちゃ快適だったんです。誰も来ないし、プライベート空間だし。学校なのにみんなと群れないで1人の部屋を持てているような気分になって、ちょっと特権意識みたいなものもありましたね。 ――当時のヒャダインさん自身に対して、今、どんな言葉をかけてあげたいですか。 ヒャダイン: 「君は正しい」って言うと思います。学校は狭いですし、何かの信念や趣味趣向が合った人ではなく、ランダムで人が集められている場所。ガチャを引いているようなものです。そんな狭い場所で、友だちや心を許せる人はできなくて当然だと思うんですよね。逆にそこで友だちをバンバン作って心を許せる人がいるほうがレアケースで、ガチャ運が良いんだなと思います。 僕は、人を信じて裏切られた経験が何回かあったし、本当の気持ちをシェアできる喜びも知らなければ周りに誰もいなかった。特に当時はインターネットもないし、学校・教室だけが全てという世界です。そこに気の合う人がいないなら、無理矢理友だちを作る必要はなかったと今でも思いますね。 僕は大人になってから、特に30代になってから、10代の頃からは考えられないぐらいに友だちが増えました。互いに愚痴ったり、悩みを言ったり言われたりできる友だちに、すごく助けられています。ただ趣味趣向が似ていて話が合うだけではなくて、悩みを聞いてもらったときに何か新しい言葉をくれたり、ただ寄り添ってくれたり、そういったことで助け合える。友だち関係が本当に続くし、気が合います。10代のガチャのような環境で友だちを作れない人も、大人になってから友だちができる可能性はあるので、あきらめないでほしいです。