「学校は友だちができなくても当然の場所」ヒャダインさんが学校生活に悩む子どもたちに伝えたいこと #今つらいあなたへ
一日一日をなんとか生き抜けば、学校から解放される日が来る
――ヒャダインさんのように、苦しいことを周りに打ち明けられない子どもたちが多くいると思います。 ヒャダイン: もしいじめを受けているとしたら、それはあなたが弱いということではないし、恥ずかしいことでもなくて、一刻も早く逃げなきゃいけない緊急事態です。いじめられればいじめられるほど心がすり減るし、悲しい気持ちの貯金がどんどん増えていって、良いことはひとつもない。とりあえず親にも言おう、先生にも言おう。それでもダメなら、いじめられた子たちの避難所になる施設もあるからそこに連絡してみよう。今ならSNSやLINEでも相談できます。全員が敵ではなく、この世に1人は助けてくれる人がいることを知ってほしいです。 「これぐらいのいじめられ方だったら相談する資格がない」と思う人がいるかもしれませんが、そんなことないです。自分が嫌な気持ちになっている、いじめられていると思ったら、その時点でいじめ。自分の気持ち優先で動いてほしいですね。 ――今も昔も、夏休み明けに学校に行きたくない子は多いと思います。そのことについてどう感じていますか。 ヒャダイン: そりゃそうだと思います。夏休みの後半になってきたら、「ああ、またあの日々を3カ月間過ごさなきゃいけないんだ。今回は秋だから文化祭も体育祭もあるかもしれない」と思うと、もっと憂うつになりますからね。 文化祭や体育祭があったら、みんなで何かしなきゃいけなかったり、放課後に残ったりしますが、そういったときにハブられるんですよね。ハブられることを考えて、ゾッとするんです。ハブられたときには、また「私は傷ついてませんよ」と平気な顔をして、そっと立ち回らなきゃいけない。でも、仏頂面で立ち回っている奥では、ものすごくハートが切り刻まれてる。なんで、あのハートを切り刻まれる感じをまた経験しなきゃいけないんだと思うと、行きたくないっていう気持ちはめちゃくちゃよくわかりますね。 ちなみに、文化祭の時は、僕は抜け出して映画を観に行ったりしました。本当は良くないんでしょうけど(笑)。特に観たいわけでもない映画を観ていたのを思い出しますね。 苦しんでいる子たちには、真面目で完璧主義な子も多いんですよ。「親の期待に応えなきゃいけない」とか。でも、うまくずるく立ち回ってほしいですね。僕もその真面目なタイプではあると思うんですけど、放送室に逃げ込んだり、用務員のおじさんのところに行ってテレビを見たりもしました。学校にいつつ、1人でいる方法を見出す。「どこに行けば1人になれるだろう、あいつらから離れられるだろう」と、すごく狡猾(こうかつ)に考えていた感じはしますね。そんな逃げ道の作り方を見つけてほしいです。 ――「夏休み明けブルー」になっている子どもたちにメッセージをお願いします。 ヒャダイン: 「夏休みが終わったらまたあの生活が待ってる」と思うとゲロ吐きそうなくらい辛いと思うんですけど、一日一日をなんとか乗り越えたら、その先には学校からの解放があるわけで、いつか終わります。 「今日終わったらゲームをしよう」「好きなYouTuberの新しい動画を見よう」「おいしいものを食べよう」と、何かしら小さな良いことがその一日にはあると思うんです。その分、めちゃめちゃ嫌なこともあるけど、とにかく目の前の一日一日を、なんとか生き抜いていく。 なんとか一日一日を乗り越え、学校と教室から解放されたときに、自分の好きなものを一緒にシェアできる友だちが待っている世界、お仕事で新しいことに挑戦できる世界があります。学校という狭い世界が全てだと思っている人が本当に多いけど、そこから解放されたら良いことが待ってる。 度をすぎた辛い思いをしたら逃げ込んでもいいし、逃げ回ってもいいし。助けてくれる人は絶対1人はいる。自分のことを「弱い」「もっと完璧でいないといけない」と思い込みすぎるのは良くない。だって、自分自身が自分の敵になっちゃったらもう誰も助けてくれないじゃん。誰にも理解されてないのに、自分自身まで敵になっちゃったら、もう四面楚歌だから。なんとか自分自身だけには、甘く優しくしてやってほしいです。 ----- ヒャダイン 音楽クリエイター 本名:前山田 健一。1980年大阪府生まれ。3歳の時にピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学を卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。ももいろクローバーZ、King&PrinceなどアイドルからJ-POP、アニメソング、ゲーム音楽など多方面への楽曲提供を精力的に行い、自身もタレントとして活動する。 文:遠藤光太 制作協力:Viibar