「なぜ障害者が妊娠すると『おめでとう』ではなく憐れんだり怒ったりするんだろう」車椅子ママ・千葉絵里菜(29)が子育ての様子を発信し続ける訳
でも私は、どうしても夫の血を引く子どもを産みたかったので「自分の命と引き換えでもいいから、産むという選択肢しか考えられない」と伝えていました。夫は困惑しながらも、私の意思を尊重してくれました。今までの私は心のどこかで、「脳性まひで重度障害のある私が子どもを産むなんてムリだ」って、本当の気持ちを押し込めて生きてきたんですね。でもこうして子どもを授かることができた。「可能性は無限大なんだ!」って思いました。
■なぜ、憐れんだり悲しんだり怒ったりするの ── 妊娠中に困ったこと、大変だったことは何ですか? 千葉さん:私は脳性まひがあるために普段は筋弛緩剤を飲んでいるのですが、妊娠初期は胎児に影響があるかもしれないので飲むのを止めていました。そうすると、不随意運動といって、自分の意思とは関係なく体が勝手に動いてしまう症状が出るんですよ。そのときは自分の体が自分じゃないような感じがしてつらかったです。眠っている間も体が勝手にバタバタ動くので寝られず、夫や母、周囲の人にすごく助けてもらいました。
睡眠不足やホルモンのバランスが崩れたことが影響したのか、当時は思考もネガティブになってしまい、人と会いたくないので、できるだけ出かけないようにしていました。たまに調子がいいときに外出しても、車椅子でお腹が大きい私を見て「この人、本当に子どもが産めるの?」と思われているんじゃないかと被害妄想がすごかったです。 そんな時期にSNSで、旧優生保護法によって過去に同意なく子宮を摘出された脳性まひの方のニュースに対してのコメント欄を目にしてしまいました。「障害があるのに子どもを産むなんて親のエゴだ」といったコメントが並んでいて、かなり落ち込みました。
NHKでパラリンピックのキャスターをしていたころ、一生懸命“共生社会”を訴えてきた意味は何だったんだろう、とも思いました。健常者の方が妊娠したら「おめでとう」としか言われないのに、なぜ障害者が妊娠すると憐れんだり悲しんだり怒ったりするんだろうと。障害があっても、妊娠しておめでとうと言われる社会が当たり前であってほしいのに。 ── 筋弛緩剤はいつごろまで飲めなかったのですか? 千葉さん:妊娠5か月目になってから札幌の病院で相談したら、「安定期に入ったし、不随意運動によって転んだりするほうが大変だから飲んだほうがいいよ」とアドバイスされて再び飲むようになりました。そうすると体がラクになり、心も安定していきました。出産後どうなるかわからないから今のうちにいろんな場所に出かけておこうと、夫が積極的に外に連れ出してくれて楽しく過ごしました。