日本のBtoB-ECはさらに拡大できる余地がある? 流通構造の基本+米国を上回る日本の卸/小売比率に見る「企業間取引の最適化」の期待
企業間取引における既存のアナログな手法では、FAX以外に電話、実店舗、担当営業、電子メールなどさまざまである。FAXの利用状況から察するに、これらの利用度も高いと想像できる。製品を売る側も調達する側も、共に従来のやり方を変えたくないという思いが強く作用しており、業務が硬直化しているのではないだろうか。
BtoB-ECの意義
ここまで日本の流通構造の状況を解説した。これらを踏まえ、改めてBtoB-ECの意義を次のように整理してみた。参考にしていただければ幸いである。 ■ (1) 取引先の新規開拓 ここで言う「新規開拓」とは製品の販売側、調達側の両方に当てはまる。企業間取引は互いに信用がベースとなるため、既存の取引先を長年固定しているケースが多いと見る。もちろん新参者の企業が相手の信頼を獲得して簡単に取引を開始できるほど甘くはないだろう。しかしながら、未開拓の取引ルートが実際には多く存在しているのではと推測される。これをBtoB-ECで掘り起こすことができれば、企業間取引の最適化につながるであろう。 ■ (2) 人手不足対策 国立社会保障・人口問題研究所発表のデータによると、2024年から2044年の20年間で生産年齢人口(15~64歳)が約20%減少すると予想されている。至る所で人手不足となり企業が人材を確保することが難しい時代となる。そのため、調達業務や販売業務の効率化は不可避だ。AIを使用した自動発注などBtoB-ECをフル活用することが期待される。 ■ (3) セキュリティ/コンプライアンス対策 FAXがいまだに現役で活躍しているが、セキュリティの面で情報漏えいの不安が残る。また口頭での発注などは金額や数量が間違って伝わってしまうと「言った」「言わない」の論戦に発展することもあるだろう。デジタル化、すなわちBtoB-ECの導入によってセキュリティやコンプライアンスを確保する意味合いも強いと考えられる。 ◇ ◇ ◇ 以上3点からの考察は個々の企業目線での話だ。マクロの目線で捉えれば、BtoB-ECのさらなる発展によって流通構造全体が最適化されることを筆者は期待している。 米国と比較して日本の「W/R比率」は高い。単純にこの値をできるだけ低くするということが目標ではないが、最適化の余地が残っているように思われるため、BtoB-ECを通じて変革が生じればと願う次第である。