日本のBtoB-ECはさらに拡大できる余地がある? 流通構造の基本+米国を上回る日本の卸/小売比率に見る「企業間取引の最適化」の期待
日本の流通構造の特徴とは?
流通構造に関して、「W/R比率」という指標がある。これは小売市場規模を分母、卸売市場規模を分子として計算する比率である。値が大きい程、小売業に対して卸売業の規模が大きいことを意味する。 「W/R比率」が大きければ、卸売業者間で複数の取引が実施され、取引金額が二重、三重と計上されていることを意味する。この値を他国と比較することで、日本の流通構造の特徴が見えてくる。ちなみに「W」は「Wholesale」、すなわち卸売業、「R」は「Retail」、つまり小売業の意味である。 ・W/R比率 = 卸売市場規模 ÷ 小売市場規模(小売市場規模に対して卸売市場規模がどれだけ大きいか測る指標) 日本の2023年における小売市場規模は163兆円、一方で卸売市場規模は431兆円である。「W/R比率」は2.64。 比較対象として米国を計算してみよう。2022年の数値になるが、米国国勢調査局によると小売市場規模は6兆9161億USドル、卸売市場規模は11兆3823億USドル。「W/R比率」は日本よりも低い1.65。米国の「W/R比率」は日本の6割強にとどまる。 米国の小売市場規模は日本円で1037兆円(150円/USドルで計算)と日本の6倍以上。規模が巨大であれば、小売業をしっかり支えるために卸売市場規模も相応に巨大化しても不思議ではない。にもかかわらず、米国の「W/R比率」は日本よりも遥かに低いのは、米国の場合メーカーと小売業者の距離感が近い言い換えることができる。
このことから、メーカーと小売業者が直接取引しているボリュームが相当あるのだろうと推察できる。小売業者から見ると、日本は企業間取引に最適化の余地があるのではないだろうか(※卸売市場規模が単に減少すればよいということではなく、最適化の観点で調整できるとの見解であることを予めご了承いただきたい)。
未だアナログな手法が利用されている企業間取引
結論から言えば、企業間取引の最適化にはDX化、すなわちBtoB-ECが必要不可欠だと筆者は考えている。 その実現をめざすにあたっての阻害要因は何か? 筆者は企業間での必要な部材や製品の販売/調達において、いまだアナログな手法が多く利用されている点をあげたい。つまり、従来の手法に固執して業務改善ができていないということである。その結果、企業間取引の最適化が遅れているのではないかと見ている。 それを裏付けるデータとして、FAXの利用状況を紹介したい。一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会が実施したアンケートによれば、FAXを「日常的に使用している」は18.5%、「たまに使用している」は21.6%であり、合計すると40%を超えている。また、FAXの用途について最も多いのが「報告・連絡書」で59.2%、次に多いのが「受発注書」48.6%である。 FAXは誤送信リスクがあるため利用を制限する企業は多いと聞くが、実は利用度が高いことがわかる。データを見る限り企業間取引においてFAXはいまだにバリバリ現役の情報伝達手段なのだ。