生ごみを減らしたら町に図書館が建った 食品ロス削減で暮らしは豊かになるのか? #くらしと経済
1ドルの食品ロス削減投資が14ドルの利益に
「食品ロスを減らすと経済(売り上げなど)が縮むから減らしてはいけない」 2008年から筆者が食品ロス削減に取り組む中で、講演の際の質疑応答や、記事投稿への反響、SNSなどで何度も受け取ってきた意見だ。本当にそうだろうか。 日本企業の食品ロス削減に関する取り組みと結果を見てみよう。 京都市とスーパー「平和堂」 と「イズミヤ」 は同市内の5店舗で、賞味期限や消費期限の手前に設定される「販売期限」で棚から撤去せず、賞味期限や消費期限ギリギリまで食品を販売する実証実験を1カ月間実施。すると食品ロスは10%減り、売り上げは5.7%増加した。実験に参加した店舗は「『捨てないで済む』の効果は大きいと感じた。会社で共有します」と手応えを得ていた。 ある回転ずしチェーンでは「できたてのすしをお客様に提供したい」という思いから、「回さない」店舗を2012年に開店。一般的に回転レーンで数回転しても取ってもらえなかったものは廃棄されるが、この店舗では、注文を受けて握り、専用レーンで届ける。握りたてのすしは客に喜ばれ、食品ロスの削減にも成功。「回さない」店舗は回転レーンのある店舗と比べ、1.5倍の売り上げを記録した。 廃棄のない注文データは食材の準備量の需要予測にもつながった。以前は感覚的に「まぐろ150皿」などと準備していたが、需要と供給の誤差が減り、準備する食材のロスも減らすことができた。同社の担当者は、このような成果がメディアで紹介されるたびに社内にも告知し、社員もやりがいを感じているとしている。 実際に、世界資源研究所(WRI)は2017年3月、企業が食品ロス削減に1ドル投資すれば、さまざまな面で14ドルのリターン(利益)が生まれると発表。WRIは17カ国、700社、1200事業所の財務コストとデータを評価。食品ロスの定量化とモニタリング、食品ロス削減のための社員研修、賞味期限を延ばすための容器包装の変更などの企業投資を1ドル行うと、販売できる食品の割合の増加や廃棄物処理のコスト削減で14ドル利益が上がると算出したのだ。