「オルビス」が激戦区のドラコスに参入 低価格帯スキンケアに新風を吹き込む
大手化粧品メーカーが軒並み高価格帯にシフトする中、「オルビス(ORBIS)」は990円~1210円という価格帯で“ショットプラス”を今秋発売する。オルビスの2024年1~6月期は、売上高が前年同期比14.8%増、営業利益が同44.5%増と好調な業績を記録する中で同社が、低価格帯かつ激戦区のドラッグストア市場に「なぜ」「今」「あえて」参入するのか。小林琢磨社長に聞いた。 【画像】「オルビス」が激戦区のドラコスに参入 低価格帯スキンケアに新風を吹き込む
「ビューティーを諦めない」「生活者を取り残さない」
―――“ショットプラス”発売の経緯を教えてください。
小林琢磨オルビス代表取締役社長(以下、小林):まず根本的な背景として、オルビスは一人一人が誰かと比べることなく、自分らしく年齢を重ねていける、「スマートエイジング」を掲げています。オルビスの創業は1987年。化粧品は百貨店や専門店での販売が主流の時代ですが、まだ比較的珍しかった通信販売という新しい買い物体験をスタートしている。「百貨店のカウンターが苦手な人もいるよね」「シンプルな化粧品が好きなお客さまもいるよね」と、お客さま一人一人のニーズに寄り添うことを基軸にしています。
そのうえで現在の化粧品市場を見渡すと、好調なのは1万円以上の高価格帯か、1500円以下の低価格帯。大手は軒並み高価格帯にシフトしています。自社研究所を有する開発力のある会社が「先端技術を高級化粧品に搭載する」、それ自体は素晴らしいことです。一方で、取り残されている人はいないだろうか、“生活者全体のビューティ”に寄与していないのではないかという思いがありました。
―――「生活者を取り残さない」ための意志決定とは?
小林:ブランドの根幹にそういう思いがあった上で、市場分析上でも取り組む価値のある分野だと思いました。きっかけはコロナ禍です。生活者の価値観や購買行動が変化した面と、逆に変わらない面が如実に示された。まず、変わらなかった面でいうと緊急事態宣言の発出にも関わらず、思ったほど化粧品のEC比率が上がらなかったことがあります。