3歳からボールを握っていた…“打撃の職人”巨人・篠塚和典氏の成長秘話 ドラフト1位指名も喜べなかった理由は「巨人の星」!?
肋膜炎で入院もベッドで練習
徳光: 甲子園での活躍でプロ野球関係者が篠塚詣でに来ますよね。2年生のとき何球団ぐらい来ましたかね。 篠塚: 7~9くらいじゃないですか。 徳光: すごいな。でも、病気になってしまうんですよね。 篠塚: 2年の甲子園の後、秋の大会のときですね。次の日が試合の夜中に僕、寝汗をかいたんですよ。もう体中びっしょりで、朝起きたら熱があった。練習で打ってもボールが全然飛ばないんです。結局、1回戦で負けちゃったんですけど、そのあと病院に行ってレントゲンを撮ったら、胸が半分真っ白で。 篠塚氏がかかったのは肋膜炎、肺を包む胸の膜に炎症が起きて肺に水がたまってしまう病気だ。10月から2カ月半の入院を余儀なくされた。しかし、篠塚氏は入院中もベッドの上で野球の練習を続けていたという。 篠塚: 僕はその間にスローイングを覚えちゃったって感じなんです。 徳光: えっ、どういうことですか。 篠塚: 天井としか向き合ってないですから、寝っ転がって、天井に向けてずっとボールを投げてた。それで、肘の使い方を…。 徳光: つまり、プロ野球選手は諦めてはなかった。 篠塚: ないですよ、それは。まだ2年生ですし。
巨人1位指名も喜べず
篠塚: 3年のときは甲子園に出られなかったんですね。その後、監督とも話をして、進路はノンプロの日本石油(現・ENEOS)に決まってたんですよ。合宿にも行って、「社会人って、こんなにいいもの食ってるんだな」なんて思ったり。 徳光: 練習にも行ってたんだ。 篠塚: はい。背番号3をもらうことも決まってたんですよ。 そしたら、ドラフトの1週間くらい前に監督に呼ばれて、「おまえ、プロ野球はどこが好きだ」って、いきなり聞かれたんです。それで僕は最初、「阪神」って言ったんです。 徳光: 藤田平さんがいますしね。 篠塚: 次は「中日」。前の年に土屋(正勝)さんが中日に行ってるし、先輩がいるところがいいなと思って。3番目に「ジャイアンツ」って言ったんですよ。 そしたら、「実はジャイアンツからお前を指名するって連絡が来た」って言われて…。でも、僕は喜べなかったんですよ。体力のこともあるし…。僕らは『巨人の星』で育ってるから、ジャイアンツのああいう練習にはついていけねぇなって(笑)。 徳光: アニメのイメージ(笑)。 篠塚: そうなんです。 で、ドラフト当日になって、「これは長嶋さんから連絡が来たんだ」っていう話も聞いて。それでも、僕はまだ指名されるのを喜べなかったんですよ。 篠塚: で、学校のチャイムがいきなりピンポンパンポンって鳴って、「今、篠塚利夫(当時の名)が読売巨人軍に1位で指名されました」。 徳光: 校内放送で! 篠塚: そうなんです。周りはバーッて喜んでて。でも、僕は喜べなかったんですよ。1位でしょう。1位っていうのもね…。 徳光: その前に1位指名するっていう話があったんですか。 篠塚: いや、全くないです。聞いてないです。 徳光: 僕がうかがったところでは、ミスターは最初からそのつもりだった。 篠塚: だったみたいですね。
【関連記事】
- 【中編】長嶋監督に暴言浴びせた“地獄の伊東キャンプ”…篠塚和典氏が語るミスターとの師弟関係「ノックで監督に向かってボールを投げた」
- 【後編】バットが届けばストライク!? 巨人・篠塚和典氏“打撃の職人”の神髄 伊藤智仁氏“奪三振記録”の試合で放った伝説のサヨナラアーチ裏話
- ドラフト5位指名も「交渉しません」…ヤクルトのレジェンド・松岡弘氏が明かした入団裏話 高校の1年先輩・星野仙一氏は当時から変な意味で有名人!?
- 親友にして盟友・星野仙一氏との絆…田淵幸一氏が明かした2人だけの関係 ライオンズへの衝撃トレード…そのとき後輩・掛布雅之氏にかけた言葉
- あの国民的女優からまさかのカンニング!? アキレス腱痛から奇跡の復活“不屈の男”中日・谷沢健一氏が長嶋氏・王氏から送られた言葉とは