ソフトバンクの“熱男”松田宣浩がキャンプイン直前に語る「知られざる苦悩」と「熱男誕生前夜への回帰」
だが、脇役に満足して立ち止まるつもりは毛頭ない。 「反省もあるし悔しさもある。もっとできると思う。数字がここまで落ちると考えることはたくさんある。衰えと言われ、そこに自分自身が納得したら終わり」 シーズンの数字は屈辱的だった。打率.228はルーキーイヤー以来のキャリアワースト2の数字。2018年に32本、2019年に30本と打ってきた本塁打数は、6年ぶりの10本台となる13本に終わり打点46も11年ぶりに50以下に落ちた。出塁率.285も10年ぶりの3割切りである。 ベテランにいったい何が起きていたのか? 「原因は色々ある。32本、30本と打って13本。めちゃくちゃ下がった。僕の場合、終わってみれば、これくらいの数字というのを常にイメージしているが、想像できないほど低い数字。技術面もあるが、気持ちの面が大きいと思う。新型コロナで開幕が延期となる前のオープン戦はバリバリ調子が良かったが、開幕が遅れたことでスタートにしくじった。持っている数字が高いと気持ちよくいける。CSもシリーズも出だしが悪かったことに尽きる」 開幕から数字が伸びない。6月の打率は.128。 1割台の打率がバックスクリーンに表示されると「吐き気がした」と笑う。 「熱男」の呼び名の通り乗っていくタイプの松田は、7月の打率を.260まで上げたが8月の打率はまた.200に降下するなどなかなか乗れなかった。 新型コロナの感染拡大の影響で約1か月間、無観客開催が続いた。ファンの声に背中を押されて集中力を増し力以上の力を出すタイプの松田にとって戸惑いがあった。 「淡々と野球が終わる。ヒットを打っても打たなくても勝っても負けても淡々と終わる。それは一種の怖さだった。応援歌もない。ジェット風船も飛ばない。15年間プロにいて初めての環境。緊張するかしないかと言えば無観客でもする。でも超満員のスタジアムの打席に立つ感動がなかった。プロは見られてなんぼ。僕には合っていなかった。厳しい状況は続いているが、今シーズンは、ファンに見てもらいたいとの思いがある」 球場を出てからの新型コロナ禍における特別な環境も不振の松田には苦しかった。 「ほぼ外に出ない。打てなかったとき、食事会場に行き、そこで食事してすぐに部屋へ戻る。気分転換ができないので自分一人で色々と考えてしまう。仲間と好きな焼肉にもいけない。それがきつかった」 自身が打てずに、しかも、チームが敗戦すると「寝汗が凄かった」という。 「寝汗で目が覚める。自分では気づかないが体が反応した。それくらいストレスがかかっていたのかもしれない」 知られざる松田の苦悩だ。