まるで「日本列島のよう」…「プレートの沈み込みからできる火山弧」の一端にある島で起きた「街をまるまる飲みこむ」ほどの大噴火
新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。そして、地球に生まれた島は、どのような生涯をたどるのか、新たな疑問や期待も感じさせられます。 【画像】島の人々に「街の放棄」を決断させた火山島 今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。 前回の記事では、山体崩壊のメカニズムについて取り上げましたが、それに続いて、大規模な山体崩壊とそれに伴う津波が観測され、また大量の火山噴出物によって首都壊滅の被害まで生じた、カリブ海小アンティル諸島のモンセラート島の噴火活動についての解説お届けします。 ※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。
変わり続ける火山島
私たちの身近にある豊かな自然で魅了する「火山島」はどのようにして生まれ、成長していくのだろうか。活火山として成長する火山島は、噴火活動を繰り返しながら地形地質を変化させ、周囲の陸や海、人間活動にも大きな影響を及ぼす。 新たに生まれた火山島はその後、数千年、数万年あるいはそれ以上にもおよぶ長い時間をかけ噴火を繰り返すことでしだいに大きな火山島へと成長し、やがて人間活動を含む生態系がそこに根付くことになる。日本列島では伊豆諸島や南西諸島の島々をはじめ、活火山とともに美しく豊かな自然が広がる「火山島」は、このような長い年月をかけて成長し変化してきた、ある意味成熟した島がほとんどだ。 変化し続ける火山島は、海域・島嶼域(とうしょいき)で起こる火山噴火とその自然や人間活動への影響について私たちに多くのことを教えてくれる。今回は火山島で起こる噴火活動に注目し、島の成長と変化、そしてその過程で生じる噴火による脅威を取り上げる。 噴火活動は地球の躍動的な姿を目の当たりに見せてくれる一方、そこで暮らす人々にも大きな影響を与える。日本列島では活火山のうち約2割が火山島だが、諏訪之瀬島(すわのせじま)など一部の火山島を除き、多くは静穏な状態にある。しかし鹿児島県口永良部島の2015年の噴火に見られるように、島民が長期間島外への避難を余儀なくされる事態もたびたび起きている。 多くの島民が避難した伊豆大島、1986年の噴火や三宅島、2000年の噴火は、火山噴火の推移予測の難しさに加えて、離島という隔絶された環境が住民避難など行政による噴火対応を難しくした事例といえる。同様に火山噴火が島に居住する人々に大きな影響を及ぼした事例は地球上のさまざまな海域に存在する。 カリブ海に浮かぶ英国領モンセラート(Montserrat)島は、人間社会が活火山の傍らで発展しつつも、時に噴火による甚大な影響を受けながら共生している島で、海域・島嶼火山を多く抱える日本列島と通ずるものも多い。 近年のモンセラート島での噴火は詳細に観測され、噴火に伴われたさまざまな現象とそのメカニズムの理解が進展するなど学術的にも重要な場所だ。 しかし同時に噴火は島民たちにそれまでの首都を放棄し、新たな歴史を踏み出すことを強いた。今回は近年モンセラート島で起きた噴火活動を振り返りつつ、著者の訪問記録も交えながら離島火山の噴火が私たちに示唆するものを考えていく。