なぜ浦和レッズは開幕ダッシュに失敗したのか…槙野ら主力放出の世代交代プランの誤算
選手交代を機に劣勢を盛り返し始めていたガンバが、数的優位に立った2分後に鮮やかなパスワークを見せる。4本のパスをテンポよくつないで右サイドを攻略し、すかさず中央へ展開。MF山本悠樹(24)がゴール正面のFW山見大登(22)へ横パスを送った。 しかし、山見がまさかのトラップミス。後方にいた福田の目の前にボールがこぼれた後の展開を見れば、勝利の女神がどちらに微笑んだかがわかる。福田が苦笑する。 「(シュートを)打ったら入った、という感じです」 迷わずに振り抜かれた右足から放たれた一撃は、ブロックしようととっさに繰り出したDF岩波拓也(27)の右足にわずかにヒット。コースを右端から真ん中へと変えて、浦和の守護神・西川周作(35)の逆を突く形で無情にもゴールネットを揺らした。 「シュートを打つ選手に対する寄せがひとつ遅れた分だけ、ちょっとイレギュラーに当たって入ってしまった。あの場面で自分に何ができたかをしっかりと分析して、これもひとつのいい経験と思いながら次の試合への準備をしていきたい」 ガンバ戦でJ1通算出場試合数を「525」に伸ばし、歴代6位の小笠原満男(鹿島アントラーズ)と並んだ浦和のキャプテンは努めて前を向いた。ポジティブな思考回路は「長いシーズンを考えると、こういう試合が必ずあるのは想定内だった」と振り返り、その上で流れを手放した岩尾の退場ではなく、その後の味方選手たちへこう言及した。 「退場者が出てしまったことは、ベストを尽くした結果だと思っている。その後の“間”というところで、プレーを続ける選手たちがもっと声を出して集中力を高める、といった部分はこれからの糧になるんじゃないかと思います」 神戸戦に続いて退場者を出し、数的不利を余儀なくされた直後に陥った一瞬のエアポケットを西川は悔やんだ。しかし、選手たちの意識だけでは対処できないこともある。 今シーズンの浦和は、フォワード登録選手が2人だけという陣容で開幕を迎えた。しかし、途中加入した昨シーズンに9ゴールをあげた、デンマーク出身のキャスパー・ユンカー(27)は、コンディション不良でベンチ入りすら果たせていない。 もう一人は高卒ルーキーの木原励(18、京都橘卒)だけという状況で、川崎戦からミッドフィールダー登録の明本考浩(24)が起用され、神戸戦で退場となった明本が出場停止のガンバ戦では江坂が最前線を担った。しかし、ストライカータイプの選手ではない。 このオフには興梠慎三(35)が北海道コンサドーレ札幌へ、杉本健勇(29)が昇格組のジュビロ磐田へそれぞれ期限付き移籍。チーム始動時からフォワード陣の層の薄さが指摘されたなかで、フロントが獲得を示唆していた新戦力はまだ実現に至っていない。