なぜ槙野智章の値千金”同点恩返し弾”が生まれたのか…浦和敵将「嫌な入り方をした。君はやはりストライカーだ」
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)と日程が重複する、明治安田生命J1リーグ第9節の一部カードが23日に前倒し開催され、埼玉スタジアムでは浦和レッズとヴィッセル神戸が対戦。今オフに浦和から神戸に移籍した元日本代表DF槙野智章(34)が、後半42分に起死回生の移籍後初ゴールを決めて2-2の引き分けに持ち込んだ。 前半19分までに3ゴールが生まれた一戦は、浦和のFW明本考浩(24)が一発退場した後半13分を境に流れが一変。数的優位に立つ神戸が猛攻を仕掛けたなかで、同18分から今シーズン初出場を果たした神戸の司令塔、アンドレス・イニエスタ(37)が放った絶妙のクロスを、浦和ゴール前へ攻め上がっていた槙野が頭で叩き込んだ。 昨シーズン限りで10年間所属した愛着深い浦和を退団。涙ながらに「敵として埼玉スタジアムで戦うときには、大きなブーイングで迎えてほしい」とファン・サポーターへ言い残していた槙野の劇的な“恩返し弾”で、19日の今シーズン開幕戦で名古屋グランパスに敗れた神戸が、敵地で貴重な勝ち点1をもぎ取った。
途中出場のイニエスタがアシスト
残り時間が刻一刻と減っていく土壇場で、至高のアイコンタクトが生まれた。 ペナルティーエリアの左角あたりでボールを持ったイニエスタと、最終ラインを離れて浦和ゴール前へ攻め上がっていた槙野。ともに誕生日が5月11日の2人が後半42分に開通させたホットラインが、起死回生の同点ゴールを導いた。 勝ち点1をもぎ取った試合後のロッカールームで、殊勲の2人から図らずも同じニュアンスの言葉を聞いたと、神戸の三浦淳寛監督がオンライン会見で明かした。 「アンドレス(・イニエスタ)は槙野の動きが見えていたと、槙野もアンドレスと目が合ったと言ってました。相手が嫌がるポジションにしっかりと入っていくことが重要で、そこに入ればアンドレスはピンポイントでパスを出せる選手なので」 明本の一発退場で流れが変わった一戦。浦和のリカルド・ロドリゲス監督は、後半31分以降はシステムを5バックに変えて逃げ切りを図った。神戸のセンターバックのどちらかが持ち場を離れられる数的優位に立っても、槙野は逡巡し続けた。 「自分が上がってバランスを崩して、カウンターを食らうのが嫌だったので」 昨シーズンまでともに戦った仲間たちが相手だからこそ、隙を見せればつけ込まれる展開が思い浮かぶ。試合を決定づけられる3点目だけは絶対に与えないと唱えながら、同時に「5分あれば点を取れる自信はある」とチャンスを待った。 攻撃力に自信を持つ槙野は、DFとFWを融合させた「DFW」なる造語で自らの役割を説明してきた。それでも自重できたのは後半18分からピッチに立ち、2戦目にして今シーズン初出場を果たしたイニエスタの存在を抜きには語れない。 「イニエスタ選手とは普段の練習からもそうですし、練習場のロッカールームも近いのですごくコミュニケーションを取ってきました。開幕戦はコンディション不良で出なかったし、今日も時間は限られていましたけど、出るときにはセットプレーを含めて僕を『見ているよ』と言われたんです。実際に動けばパスを出してくれる選手なので」