ドナルド・トランプの知られざる「敗北と栄光」、若い頃から貫く「戦い方の信条」とは
11月6日、米国大統領選は共和党のドナルド・トランプ氏が、民主党候補のカマラ・ハリス氏を下して、返り咲きを果たしました。トランプ氏が大統領選挙を戦うのは今回が3回目で、前回はジョー・バイデン氏に敗れたものの、今回の勝利により、132年ぶり2人目となる大統領への返り咲きを果たしたことになります。トランプ氏は今回の選挙戦でもいくつもの訴訟を抱えるなど、毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい人物として知られていますが、同氏の半生を改めてたどると、トランプ氏の一貫した信条と基礎が見えてきました。 【詳細な図や写真】1889年に設立されたニューヨーク・ミリタリー・アカデミーは、米国で最も古い軍事学校の1つ。規律ある環境でリーダーシップの育成に力を入れている(Photo/Ulora/Shutterstock.com)
父は不動産業の成功者、軍隊式学校で学んだこと
ドナルド・トランプ氏は1946年、父フレッド・トランプ氏と、母メアリー・アン氏の第4子としてニューヨーク市クイーンズ区に生まれています。父親はクイーンズに暮らす労働者階級相手に郊外風のレンガ造りの住宅を低価格で提供する不動産業者で、かなりの成功を収めていました。 トランプ氏はのちに自身初の著書で、自分たちの家は大きな家だったものの、金持ちだと思ったことはなく、「1ドルの価値を、勤労の大切さを知るように育てられた」(『トランプ自伝』p87)と語っています。 トランプ氏は、13歳までは父親が運営委員を務めるフォレスト・ヒルズ地区の学校に通っていましたが、自己主張の強い攻撃的な子どもで、音楽の先生にパンチをお見舞いするなど近所のガキ大将だったようです。 そのため父親は、13歳になったトランプ氏を軍隊式の私立学校として知られるニューヨーク・ミリタリー・アカデミーに入れています。トランプ氏はここでこぶしの代わりに頭を使うことを学んだと振り返っています。当時からトランプ氏は父親と一緒に建設現場に足を運ぶなど、早くから不動産業に興味を示しています。
イーロンも通った名門校での学生時代に「初の大きな取引」
1964年、同校を卒業したトランプ氏は、一時は南カリフォルニア大学の映画科への進学も考えますが、最終的に不動産業が面白いと考え、ニューヨークのブロンクスにあるフォーダム大学に入学。2年後に不動産の専門学科のあるペンシルベニア大学ウォートン・スクールに入学、1968年に卒業しています。 ウォートン・スクールという名門校で学んだトランプ氏は、同校を卒業したことを誇りに思っているようです。 「学位は何の証明にもならないが、仕事をする相手はこれをいたく尊重する」 (『トランプ自伝』p96) 同級生が新聞の漫画やスポーツ面を読む傍で、連邦住宅局の抵当流れ物件のリストを読みふけっていたほど、学生時代から不動産に強い関心のあったトランプ氏は、在学中にデベロッパーの破産により抵当流れ物件リストに載っていたオハイオ州シンシナティにある1200戸の団地スウィフトン・ヴィレッジに注目、父親と一緒に600万ドルで落札します。 買収時、1200戸のうち、実に800戸が空き家という悲惨な状況でしたが、トランプ氏は廊下にペンキを塗り、床を磨くなど徹底した手入れをしたうえで新聞に広告を掲載。1年もたたないうちに100%埋まります。 しかし、数年後に周囲の環境が悪化しつつあると気づいたトランプ氏は、団地を不動産投資信託の会社に売却、物件だけで600万ドルの利益を手にします。トランプ氏にとって初めての大きな取引でした。