ウフィツィ美術館で見るべき傑作3選──古代ローマ・ルネサンスの至宝やマニエリスムの代表作など
1. ジョット《オグニサンティの聖母》 (1300-05年)
ルネサンスの先駆けとも言えるこの作品は、西洋美術が新たな段階へと進むきっかけを作り、1世紀以上にわたってフィレンツェの画家たちに影響を与え続けた。王座の上の聖母像は当時人気のモチーフだったが、自然主義的で立体感がある人物表現を用いたジョットの絵は、ぎこちなさのあるビザンチン美術からの脱却を示す最初の作品だった。同じ展示室に飾られた、ジョットの師であるチマブーエの同様の作品と比べてみるとそれがよく分かる。 構図は左右対称に近く、聖母の両脇にいる天使と聖人たちがほぼ鏡像のように描かれている。マリアが抱いている幼子イエスは、赤ん坊というより小さな成人男性のようで、片方の手を上げて祝福をしながら、もう片方の手で知識を象徴する巻物を握りしめている様子が、その印象をさらに強めている。この作品は、ジョットがスクロヴェーニ礼拝堂(アレーナ礼拝堂)に描いた有名なフレスコ画とほぼ同時期に完成した。ヴェネツィア近郊のパドヴァにあるこの礼拝堂のフレスコ画は、2世紀後のミケランジェロに大きな影響を与えることになる。
2. シモーネ・マルティーニ《受胎告知》(1333年)
上部に華麗な彫刻が施され、金箔とテンペラで描かれたこの大作は、ルネサンスへの移行期における傑作の1つ。シエナ大聖堂の側祭壇のために注文されたもので、大天使ガブリエルがマリアの前に現れ、彼女がイエスを身籠ったことを告げる受胎告知の絵に典型的な図像が散りばめられている。ガブリエルが持っているオリーブの枝は平和を、上部の鳩は聖霊を、白い百合はマリアの純潔を象徴し、ガブリエルの口からマリアの耳に向かって綴られた文は、「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」という意味を表す。 ガブリエルのはためくマントと広がった翼は、彼が地上に降り立ったばかりであることを示し、マリアは驚いたように身を引いて、片手で衣を引き寄せながら、もう片方の手で閉じかけた本を握りしめている。また、祭壇上部のトンド(円形画)には、預言者エレミヤ、エゼキエル、イザヤ、ダニエルが描かれ、受胎告知の場面を挟んだ左右には2人の守護聖人たちが立っている。