ウフィツィ美術館で見るべき傑作3選──古代ローマ・ルネサンスの至宝やマニエリスムの代表作など
イタリア・フィレンツェを代表する美術館、ウフィツィを訪れると、美術史の本の中に迷い込んだ気分になる。フィレンツェがルネサンス発祥の地であることを思えば当然かもしれないが、あまりに重要な作品にあふれているのだ。トスカーナ地方の中心に位置するこの街では、世界最高峰のワインや料理、芸術、建築が、狂宴を繰り広げるがごとくひしめき合いつつ、完璧な融合を見せている。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロ、ボッティチェリ、カラヴァッジョといった西洋美術の巨匠たちの中には、フィレンツェ出身の芸術家も多く、たとえ出身でなくても一度はこの街に住み、修行をしたり制作に勤しんだりしている。 主に古代から18世紀にかけての作品を収蔵するウフィツィ美術館は、フィレンツェの多くの建築物と同様、それ自体が特筆すべき作品だ。アルノ川のほとりにあるこの建物は、16世紀半ばにメディチ家のコジモ1世の命で、芸術家・建築家・美術史家のジョルジョ・ヴァザーリが設計した(彼の著書『芸術家列伝』は、今も14世紀~16世紀の芸術家に関する重要な資料となっている)。建物はもともと、市の行政・司法機関のために造られたもので、ウフィツィという名はイタリア語で事務所を意味するufficioに由来する。 メディチ家は、フィレンツェの歴史やルネサンスの興隆と切り離せない存在だ。銀行業で財を成したこの裕福な一族は、代々古代ギリシャ・ローマの美術品を収集し、同時代の芸術家をパトロンとして支援している。こうした王侯貴族に加え、カトリック教会も芸術家たちの主要なパトロンだった。読者の中には、何年も通った教会の日曜学校よりも、美術史の授業で聖書について詳しくなったという人もいるだろう。ウフィツィ美術館にも、受胎告知や礼拝、磔刑、聖母、斬首といったキリスト教のモチーフを中心とした宗教美術が、やや食傷気味になるほど並んでいる。それに加え、互いに婚姻関係を結んでいた名家の人々を描いた夥しい数の肖像画も圧巻だ。 美術館の膨大な展示品に圧倒されることなく傑作をしっかり鑑賞できるよう、この記事では3の必見作品をリストアップした。