川崎フロンターレは「ちゃんと負けて」いないから難しい。試合終了までの、それぞれの思い「またか」「終わったと…」【コラム】
「いい反面教師になった」キャプテンの冷静な判断
「でも、セガちゃん(瀬川祐輔)も反応していたので、そこでガチャガチャとならないように。セガちゃんが先に反応した分、その後をバックアップしようと思っていたら、うまくこぼれてきました」 1トップとして途中投入されていた瀬川祐輔とともにこぼれ球に迫りながら、脇坂は急停止して松本と間をつくっている。次の瞬間、瀬川が至近距離から放った強烈な一撃が松本の下腹部を直撃する。再びボールがこぼれるも、苦悶の表情を浮かべた松本はその場にうずくまったまま反応できない。 満を持してボールを拾った脇坂は、状況を冷静に見極めながら最善の手段を弾き出していた。 「すぐにバーンと思い切り打ったら多分、誰かに当たって入っていなかったと思うので一回かわそうと。相手が慌ててボールを奪いにくる分、かわせるかな、という感覚もあったので。それでも、見過ぎると逆にあれだと思ったので、落ち着いて相手をかわしてからすぐにシュートを打った、という感じです」 左側へ回り込み、直後に左足を軽くヒットさせたコントロールショットを放つ。ボールは目の前にいた瀬川、ゴールのカバーに入ったMF戸嶋祥郎やDF犬飼智也が届かないコースをゆっくりすり抜けていった。 「セガちゃんが思い切り蹴り込んで、弾かれたのを目の前で見ていたので、いい反面教師になった感じですね。ああいう場合はちょっとかわして打てば入る、というのは感覚というか、自分が培ってきたものをゲームのなかで出せた感じです。誰かにぶつけないように、あれが最善だと思ってとっさに選択しました」
勝てない理由「ちゃんと負けていたら…」
リーグ戦で6試合続けて白星をあげられない、まさにもどかしい状態で、川崎は20日に敵地・三協フロンテア柏スタジアムで行われたJ1リーグ第24節に臨んだ。ヴィッセル神戸との第18節で敗れた後は5戦連続のドロー。しかも直近の4試合は、すべて75分以降に失点を喫した末に追いつかれていた。 思うように勝ち点を積み重ねられない理由はわかっていた。先制点は奪える。ただ、追加点が遠いまま、前半から飛ばしていた分だけ失速する。36歳の大ベテラン、FW小林悠は現状をこう語っていた。 「実際にプレーしている感覚として、本当にもうちょっとでつかめそうなところで勝てない。ちゃんと負けていたら、課題を直していかなきゃいけないけど、勝てていないけど内容がいいから難しい」 柏戦でも開始わずか4分に、左膝半月板損傷から約3カ月半ぶりに復帰したDF三浦颯太のクロスを、FW山田新が右足ボレーで合わせて先制。10分にはFW家長昭博が右サイドから、利き足とは逆の右足で送った絶妙のクロスにファーで再び山田が、今度は頭で反応してゴールネットを揺らした。 川崎が試合中に2点以上のリードを奪うのは、名古屋グランパスとの第17節以来、実に7試合ぶりだった。このときは最終的に2-1のスコアで、柏戦の前では最後となる白星をあげていた。しかし、直後の12分に柏のMF白井永地にJ1初ゴールを決められる。雷鳴がとどろく敵地に暗雲がたれ込みはじめた。 試合後の取材エリア。脇坂は「今日は…」と切り出し、直後に言い直しながらこう続けた。