なぜサガン鳥栖にクラスターが発生したのか…金監督はミーティングでマスクを着用せず
遠征メンバーをベンチにも入れずに隔離する判断には、もちろん当該選手を選んだ金監督も関わっていたはずだ。万全を期すためにクラブ全体で共有した「休む勇気」を、あるいは「報告する勇気」を、せめて38度の発熱が確認された時点で指揮官ももつべきではなかったのか。クラブとしても責任をもって、体調に関する報告を徹底させる関係を選手、スタッフと築くべきではなかったのか。 どこでも、誰でもリスクを背負っている現状を考えれば、新型コロナウイルスに感染したことは責められない。問われてくるのは感染が危惧された状況における、各自の立ち居振る舞いとなる。ロッカールームでのマスクの常時着用や、ロッカールームそのものを3つも使って「3密」を避ける防止策を徹底してきたからこそ、クラブ全体に認識の甘さがわずかでもあったことが残念でならない。 金監督も含めて、10人の感染者の感染経路は現時点で判明していない。ただ、あらためて経緯を振り返れば、金監督から感染したと考えるのが自然だろう。Jリーグの藤村部長も「経路の特定は保健所の判断を待ちたい」としながらも、個人的な見解としてこう語っている。 「クラブ内で連関しているのではないか、と」 70ページを超えるガイドラインに定められたプロトコルは、選手やスタッフらの自己申告をベースに組み立てられている。東京都や大阪府など大都市圏を中心に、全国で感染の再拡大が続いているいまでは、ガイドラインのベースそのものを考え直す段階に直面している。村井チェアマンが言う。 「自覚症状は本人にしかわからないので、第三者がストップできる仕組みは現時点ではない。自覚症状のみに依存することなく、どのようにして健康管理を進めていけばいいのか。PCR検査の頻度を上げていくのか。あるいは、1日でも熱が出たら検査を受けなければいけない形にするなど、専門家の助言を受けながら対応していくことになると考えています」 8日に対戦した鹿島には金監督や鳥栖の陽性者の濃厚接触者がいないと保健所から判断され、12日の清水エスパルスとのルヴァンカップ・グループステージ最終節は予定通り行われた。しかし、活動を休止した鳥栖の今後に対してはJリーグとの間で「今回の中止に限らず、今後の日程も再考する可能性があることをともに認識している」(村井チェアマン)という。 今後は15日にガンバ大阪戦(ホーム)、19日にベガルタ仙台戦(アウェイ)、23日には北海道コンサドーレ札幌戦(ホーム)と過密日程での連戦が組まれているが、保健所から2週間を活動休止の目安と要請されている状況を踏まえれば、3戦とも開催が極めて厳しい状況にあると言っていい。 竹原社長も当面はクラブ内でのさらなる感染拡大を阻止することと、新たに確認された9人の感染者の濃厚接触者を特定する保健所の作業に全面的に協力する。その上で13日には11日の検査で一度は陰性が確認された選手やスタッフに対して、再びPCR検査が実施される予定だ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)