腹が凹むとこんなにいいことがいっぱい。日本人が“腹凹”にトライするべき理由(専門家が監修)
脂肪肝と内臓脂肪がインスリンの効き目を悪くする
筋肉(骨格筋)におけるインスリンの効き目(インスリン感受性)を比較したもの。内臓脂肪だけが単独で蓄積するケースでは大きな低下は見受けられないけれど、脂肪肝が蓄積すると有意に効き目が下がってくる。 すると質を量でカバーしようと、インスリンの分泌量が増えてくる。インスリンは血糖を体脂肪に合成する働きがあるため、さらなる脂肪肝や内臓脂肪の蓄積を促しやすい。内臓脂肪+脂肪肝のダブルパンチは万病の元。邪魔な内臓脂肪と脂肪肝は即刻体外へ追い出そう。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病、そこから生じる心臓病や脳卒中などの上流には血糖値の上昇や血液・血管の異常があり、その上流に内臓脂肪蓄積や脂肪肝がある。腹を凹ませて内臓脂肪と脂肪肝を解消することが重要だ。
日本人はお腹が少し出ているだけで病気に罹りやすい
そもそも肥満とは、体内に無駄な体脂肪が溜まりすぎた状態。ただ、体脂肪の蓄積度合いを正しく測るのは難しい。体組成計もかなり進化しているけれど、基本的には電気抵抗から推定しているため、必ずしも正確な値がわかるとは限らないのだ。 そこで肥満の国際的な指針となっているのはBMI(体格指数)。体重(kg)をメートル換算した身長(m)の2乗で割ったものだ。BMIと体脂肪率には相関性が高いため、肥満かどうかの目安となっている。 実は、BMIによる肥満の基準には、国内外で違いがある。日本では、BMI25以上が肥満。成人男性の3人に1人、成人女性の4人に1人が肥満となっている。ところが、日本以外の欧米諸国ではBMI30以上を肥満としている。仮に身長170cmだとすると、日本だと73kgを超えると肥満判定されてしまうが、国際基準では86kgまでなら肥満とは見做されないのである。 なぜ日本の基準は厳しいのか。 これまで見てきたように、太って内臓脂肪や脂肪肝が溜まると、生活習慣病に陥りやすい。でも、日本人を含めたアジア人は、さほど太っていない段階から内臓脂肪や脂肪肝が溜まり、生活習慣病リスクが上がる。たとえば、欧米では糖尿病は太った人が罹る病気だが、日本の糖尿病患者の平均BMIは23で肥満の基準を下回る。日本人には、お腹を1ミリも出さない努力が求められるのだ。
内臓脂肪の蓄積と血糖、脂質、血圧の異常数
健康診断を受けた日本人男性2,336人のデータを解析したもの。BMI25未満であり肥満ではなくても、内臓脂肪が多い人は血糖、脂質、血圧の異常の数が、内臓脂肪が少ない人と比べて有意に多いことがわかった。
取材・文/井上健二(初出『Tarzan』No.878・2024年4月18日発売)