WEリーグが開幕!最低年俸270万円でプレーする選手たちは何を感じたか…成功のカギは面白いプレーを見せられるかどうか
日本初の女子プロサッカーリーグ、WEリーグが12日に産声をあげた。ノエビアスタジアム神戸で午前10時にキックオフを迎えた、INAC神戸レオネッサ対大宮アルディージャVENTUSを皮切りに、新たな歴史を刻む開幕節の計5試合が行われた。 なでしこリーグから参戦した既存の9チームに新設された大宮、サンフレッチェ広島レジーナを加えた11チームで争われる今シーズンは、試合のない1チームがWEリーグの理念を具現化させる「WE ACTION DAY」を実践しながら、ホーム&アウェイ方式による総当たりのリーグ戦を実施。来年5月までの秋春制で初代女王を決める。
記念すべき第1号ゴールは神戸の“元なでしこ”高瀬愛実
先制点が自動的にWEリーグの第1号ゴールとして語り継がれる。午前中にキックオフされた唯一の開幕戦、神戸対大宮で試合が動いたのは開始わずか4分だった。 ロングフィードに抜け出したMF成宮唯が、右サイドを駆け上がって積極果敢にシュートを放つ。大宮のゴールキーパー望月ありさが必死に触れ、コースを変えた末に左ポストに弾かれたボールに冷静に反応したのが、詰めていたFW高瀬愛実だった。 相手ゴールと反対側に一度戻りながらこぼれ球を拾うと、振り向きざまに右足を一閃。強烈な一撃をゴールの左隅に突き刺して、WEリーグの歴史に名を刻んだ。 「ちょうどこぼれてきたので、とにかく『自分で決める』という気持ちでした」 神戸ひと筋でプレーして13シーズン目。なでしこジャパンとしても通算61試合に出場して9ゴールをあげている30歳のストライカーは、試合後に「本当に幸せだなとあらためて感じています」と、込みあげてくる喜びをこう表現している。 「いままでもプレーできる喜びは感じていましたけど、WEリーグになってより注目されるようになって、胸を張って『サッカーが仕事です』と言えるようになったので」 なでしこリーグのなかで神戸は稀有な形態で活動していた。選手は協賛企業の社員でありながら原則として社業には就かず、サッカーに専念できる環境にあった。それでも「仕事は何をされているのですか、と聞かれたときに困りました」と高瀬は苦笑する。 「サッカーだけで生活はしていたんですけど、それを職業欄などに書くとなるとプロサッカー選手ではなく正社員となり、いろいろと説明が必要でした。なので、シンプルに『プロサッカー選手です』と言えるのが何かすごく嬉しいんです」 WEリーグでは最低年俸が270万円で設定されたプロ契約選手を、1チームにつき15人以上擁すると定められている。他の仕事に就いていると夜間に行わざるをえなかった練習が午前中になった効果で、午前午後の2部練習や合宿だけでなく、個人トレーニングや身体のケアなど選手個々が一日を有効に使えるようにもなった。 高瀬がしみじみと語った思いはチームの垣根を飛び越えて、旗揚げのシーズンに臨んでいる“WEリーガー”全員の思いを代弁している。たとえば高瀬と2トップを組んだ17歳の高校2年生、浜野まいかも喜びをかみしめている一人だ。