WEリーグが開幕!最低年俸270万円でプレーする選手たちは何を感じたか…成功のカギは面白いプレーを見せられるかどうか
年代別の日本代表に招集され、高校1年生だった今年3月には東京五輪に臨むなでしこジャパン候補合宿にも招集された逸材は、WEリーグ参戦を見送ったセレッソ大阪堺レディースから8月に神戸へ電撃加入。プロとして受け取る報酬の使途を「お母さんがやってくれているので」とわからないとしながら、屈託のない笑顔を浮かべた。 「お金を稼いでいるという実感はないし、学校にはたまに行くという感じですけど、サッカーに集中できる生活が夢だったので、それがまず叶いました」 試合は高瀬の先制弾の8分後に浜野もファインゴールで共演。その後も2トップが1点ずつ追加するなど、攻撃力を全開にした神戸が5-0で快勝した。 午後1時半からは味の素フィールド西が丘で、優勝候補の呼び声が高い2強、日テレ・東京ヴェルディベレーザと三菱重工浦和レッズレディースが対峙した。 ホームの日テレが昨シーズンの皇后杯女王ならば、アウェイの浦和は同じくなでしこリーグ女王。先の東京五輪代表へ前者が5人、後者が4人を送り込むなど、Jリーグ黎明期のヴェルディ川崎と横浜マリノスをほうふつとさせるライバル同士の激突は前半33分、早稲田大学スポーツ科学部4年のFW植木理子のゴールで日テレが先制する。 対する浦和はWEリーグをけん引していく自負を込めて、昨シーズンまでの監督からアカデミーを含めた全体を統括する立場になった森栄次総監督が、開幕前に「プロになったからといって、勝手に盛り上がってくれるものではない」と檄を飛ばした。 問われるのはピッチ上で面白いサッカーを見せられるかどうか。そして、魂のプレーで森総監督の要求に応えたのがチーム最年長の39歳にして、現役プロ選手と筑波大学体育系助教の“二足のわらじ”でWEリーグに挑んでいるFW安藤梢だった。 後半開始4分。縦パスに素早く反応した安藤は一気に加速して右サイドを抜け出し、ゴール前へ低空の高速クロスを供給。後半開始から投入されていた東京五輪代表FW菅澤優衣香が叩き込んだ、鮮やかな同点ボレーをアシストした。 なでしこジャパンとして126試合に出場し、世界一になった2011年の女子ワールドカップ代表メンバーの一人でもある安藤は、後半途中からボランチへポジションを移し、足をつらせながらフル出場。楠瀬直木監督も賛辞を惜しまなかった。 「足をつるまで頼りすぎ、酷使させてしまったのは僕の責任ですけど、点が入ったシーンの突破は39歳とは思えない。本当に素晴らしいし、ありがたい選手です」 代表デビューがなでしこジャパンと命名される前の1999年にさかのぼる安藤は、シドニー五輪出場を逃した冬の時代を知る数少ない現役選手の一人。女子サッカーの灯が消えかねない危機に直面しただけに、待望のプロ化を迎えて心が躍らないはずがない。 試合後のオンライン取材に対応する選手のなかに安藤は名を連ねなかった。それでも、試合終了間際に2-1の逆転勝利を手繰り寄せる豪快なミドルシュートを決めた東京五輪代表MF塩越柚歩が、安藤を含めた浦和全員の思いを代弁した。 「歴史に残る日になると思いながら、いろいろな人の思いを背負って今日の試合を迎えました。あきらめないプレー、感動するプレー、面白いプレーを続けていきたい」