WEリーグが開幕!最低年俸270万円でプレーする選手たちは何を感じたか…成功のカギは面白いプレーを見せられるかどうか
WEリーグの「WE」は私たちを意味し、同時に「女性が最大限の力を発揮できるように」という、リーグの理念が込められた「Women Empowerment」の略でもある。 チームを運営する法人の役職員の50%以上を女性とする――などの参入要件が定められたなかで、女性指導者を増やしていく指針も掲げられた。 ただ、実際に参入を果たした11チームで女性監督は一人だけだった。女子サッカーの黎明期に清水第八SCや鈴与清水SCラブリーレディース、そして日本代表でも活躍した56歳の半田悦子監督に率いられるちふれASエルフェン埼玉は、ホームの熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で対峙した広島に0-3の完敗を喫した。 「(女性監督が)もっといるのかな、という思いではいましたが、スタートしてみたら私一人だけでしたので、責任とプレッシャーはすごく感じています」 1997年に現役を引退した半田監督は、調理師として働きながらサッカーの指導者としての経験を積み、常葉学園橘中学および高校の女子サッカー部監督を歴任。今年2月に埼玉の監督に就任し、現役時代には夢にも思わなかったプロリーグの舞台に挑んだ。 「女性だから、男性だからではなくて、勝つためのサッカーを追求するにあたっては、自分自身もまだまだ成長していかなければいけない部分が多々あると感じました」 前半10分までに2点を奪われた初陣を、半田監督はこう振り返った。WEリーグではプロ契約選手に対して、セカンドキャリアの選択肢を増やす意味も込めて、日本サッカー協会が発行する公認指導者ライセンスの出発点となるC級の取得を求めている。埼玉の選手たちもすでに取得している状況に、半田監督はごく近い未来をこう見すえた。 「これからは若い指導者が、どんどん増えていくと思っています」 東京五輪を無念の思いとともに終えたなでしこジャパンたちが、10年前の世界一を知るベテランたちが、そしてこれから世界へ挑もうというホープたちが躍動した開幕節は、神戸の4123人を最多として、5会場で計1万1104人の観客を集めた。 入場制限が設けられている新型コロナウイルス禍で、なおかつそれぞれのクラブがホーム開幕戦を終えれば、目新しさが薄まっていく状況と相まって最初の試練が訪れるかもしれない。東京五輪のベスト8で姿を消し、高倉麻子監督が退任したなでしこジャパンの低迷ぶりも、女子サッカー人気をけん引する役目を果たさない。 それでも、なでしこリーグ時代とは大きく異なる施策の数々を介して、2023年の次回女子ワールドカップ、そして2024年の次回パリ五輪で最初の成果を出す青写真を少しずつ具現化させていくために、WEリーグは前へと進んでいく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)