なぜ亀田興毅氏は故郷大阪にプロボクシングジムを開設したのか?
大阪でのジム開設を決断した理由は2つある。まずは弟・和毅(29)の存在だ。元WBO世界バンタム級王者、元WBC世界スーパーバンタム級暫定王者の和毅は、2019年7月の米国でのWBC世界同級統一戦に判定負けして以来、試合から遠ざかっており、同年12月には前所属の協栄ジムが休会となり、JBCの規定により国内では試合のできない無所属状態が続いていた。 今回、興毅氏がJBCのオーナーライセンスを持つプロジムを立ち上げたことで、所属プロの第1号となり、和毅はすでにメキシコから大阪に拠点を移し、世界戦への準備に入っている。 「和毅からは”お兄ちゃんありがとう”と言われた。和毅も気持ちが入っていると思う。世界トップクラスの実力があるし、まだ29歳なので何回か試合を叩いて世界タイトル戦をうまいことプロモートしてあげたい」 関係者によれば初興行として5月に大阪で実施の方向。しばらくは自主興行ができないため、他のジムとの相乗りとなるが、早ければ、年内にも自身のプロモートで世界戦を組む計画だ。 大阪に帰って来たもうひとつの理由はボクシング界の底辺拡大と新しいビジネススタイルの構築だ。 「いまあるのはボクシングのおかげ。格闘技ではRIZINやKー1が成功しているけれど、ボクシングは五輪競技でもあり、競技人口も多くポテンシャルは高いと思っているから10年スパンでいいので選手が稼げるスポーツにしたい」 業界を盛り上げていくためにはまずは、対価として選手へ正当なファイトマネーが払われることが信念としてある。そのため旧来の興行スタイルを変えたい。 「あそこのリングに立てば稼げて、賑やか。亀田ジム以外の選手も憧れるプラットフォームのような舞台を目指したい」 そのためにはYouTube、AbemaTV、ライブ配信アプリ17(イチナナ)などを使い、コロナ禍はもちろん、アフターコロナに備えた新たな興行形態で業界の発展に取り組む。関東では、横浜光ジムが昨年12月に元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪対OPBF東洋太平洋同級王者、三代大訓(ワタナベ)の好カードを「ライト級ウォーズ」と称してクラファンやYouTubeを駆使して実現。従来のテレビ放映権やチケッティングに頼る興行方式から脱却する画期的なビジネススタイルに挑戦して成果を上げたが、まだ関西の興行の世界では未開発の分野でもある。 「今までのようではコロナ禍を生き残っていけない。構想は頭の中にある」 実際、興毅氏は、昨年12月には無観客の中でのスパーリングにギフティングサービスを実施。手応えをつかんでいる。 JBCライセンスを持たない父・史郎氏はジムでの指導や経営に関与しない。だが、昨年夏からYouTube内での番組企画「3150ファイトクラブ」の一期生として指導してきたアマチュア選手の中から3人がプロテストを受験予定。 「プロになりたい思いを感じ、僕が動くしかないかなと思った。今後もプロ選手は増えて行くと思うし、そうなったら海外からもトレーナーを呼びたい」 新しいビジネススタイルを構築して彼らの活躍舞台を広げたい考えだ。