走りも快適性も凝りに凝ったロールス・ロイス「ゴースト・シリーズⅡ」
【&M連載】小川フミオのモーターカー
ロールス・ロイスが「ゴースト・シリーズⅡ」なる新型車を発表。同社が「史上もっとも先進的でドライバー志向」とうたうモデルの出来映えは? という興味をいだきつつ、私は、2024年11月に南仏で試乗する機会をもらった。 【画像】もっと写真を見る(7枚)
4万以上の車体色と上質な内装
凝りに凝ったクルマである。12気筒エンジンや変速機、それにサスペンションシステムは「ドライバーに焦点を当てた」(広報資料)、つまり運転しての楽しさをめざして開発されたとうたわれる。同時に、カメラで路面状況を読み取って乗り心地を瞬時に最適化するなど、乗員の快適性にも極力注意が払われているというのだ。 車体色は4万4000色(!)が用意され、かつ内装は素材も仕上げも、たいへん上質。熟練した担当者が手作業でウッドパネルに模様を施すオプションも選べる。特注で、絵画のような表現を、ダッシュボードに施してもらうこともできる。私は「紅白」の錦鯉が写真のように描かれたパネルを見せてもらった。 いまのゴーストが登場したのは2020年。なので今回は比較的早めのマイナーチェンジだ。特徴は、内外装に手が入れられ、電気自動車の「スペクター」やSUVの「カリナン」との共通性が見てとれるようになったこと。 外観はフロントマスクがよりシンプルな印象になっている。デザイナーによると「ひとつのかたまりのような美しさを追求しました」という。内装は、とりわけカリナンに準じるように、ダッシュボードの意匠が変わり、シート地も、「デュアリティ・ツイル」なるレーヨン素材が選べるようになった。 「デュアリティ・ツイル」と名付けられたシート素材は、 最大220万のステッチと11マイル(約17.7km)におよぶ糸を使用し、20 時間かけて完成するんだそう。デザイン的には、とりわけ、若々しい感覚のオーナーにウケそうだ。
乗り心地はゆったり「空飛ぶじゅうたん」
私が「ゴースト」と、スポーティに仕上げた「ブラックバッジ・ゴースト」に乗ったのは、マルセイユやエクサン・プロバンスに近いエリア。南仏は、この季節でも気候が温暖なことに加え、ロールス・ロイスの創設者であるヘンリー・ロイスが好んだ土地だそうで、同社ではつねにエモーショナルなつながりを強調する。 道幅はそんなに広くなくて、時には対向車とのすれちがいに神経をつかう場面もあるのだけれど、速度やカーブを高速で駆け抜けるというより、セザンヌが好んで描いたサント・ビクトワール山などの景色を楽しみながら、ゆったりした気分でドライブを味わってほしい、ということだった。 乗り心地のよさと静粛性の高さは、ロールス・ロイス車に共通する美質で、新しいゴーストも同様。まさに同社の言うところの空飛ぶじゅうたんのような乗り心地だ。ブラックバッジ・ゴーストは、加速力のよさを感じさせてくれるいっぽうで、足まわりは少し硬めの設定。好みがわかれるところかもしれない。 私はかつて、日光のいろは坂をゴースト・シリーズⅠで走ったことがある。かつてのロールス・ロイス車と一線を画して、クルマと運転する私との一体感をもっていたのが印象的だった。そのよさは、シリーズⅡでも存分に感じることができた。 ふわーっと走るいっぽう、正確なステアリングで、ハンドルを操作したとき、クルマは思いどおりに動いてくれる。なので、南仏の小さな町中で他の車両とのすれ違いのときもぎりぎりにクルマを寄せられる。全幅はミラーを入れると2mを超える車体だが、意外に大きさを感じさせないのは、そのおかげなのだ。