教室から席がなくなるのはイヤ──「ともに学び、ともに育つ」大阪府独自のインクルーシブ教育、揺らぐ足元
障害児の席消える? 国通知に危惧
しかし、この木が根元から切られるのではないか、と危惧されるような出来事が2022年度になってまもなく起こる。それが、文部科学省が4月27日に出した「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」という一つの通知で、支援学級の児童・生徒は「授業時数の半分以上」を支援学級で学ぶこと、という内容だ。 文科省はこの通知の目的を「インクルーシブ教育推進のため」としている。支援学級にいる子どもが通常学級で学べているのであれば、籍も通常学級におけばインクルーシブになるとの主張だ。しかし、これを文字通り解釈すれば、大阪の原学級保障は成り立たない。「入り込み」のようなサポートがあるからこそ通常学級で学べていた障害の程度が重い子どもは、大半の時間を支援学級で分けられて過ごすことになる可能性が高いためだ。保護者や学校関係者の多くは不安を募らせる。 枚方市に住む小林葵さん(36)もその一人だ。小2の長男にはダウン症があり、支援学級に在籍しながら、「原学級保障」の下、通常学級で学んでいる。その小林さんに、文科省通知を受けた枚方市教育委員会の方針を示すプリントが学校経由で届く。5月末のことだった。
「今学期中に通常学級か支援学級かを選んでください、という内容でした。1年生からずっと支援担の先生に『入り込み』をしてもらいながら、みんなと一緒に学んでいた。もし、この通知通りとなると、週の半分以上を特別支援学級で過ごすことになります」 その後、枚方市では来年度からの実施については見送られたものの、文科省通知に沿う形で進めていく方針に変わりはないという。小林さんは言う。 「週の半分以上を支援(学級)で過ごすということは、クラスにいる時間が他の子の半分以下になるということです。休み時間も別になったり、教室から座席やロッカーもなくなったりするかもしれない。そうなったらすごくイヤです。通常学級で過ごす時間も、クラスの『お客さん』になってしまうのでは、と危惧しています」