がん・認知症・糖尿病の可能性も…寿命を縮める「危険な眠り」30分以上の昼寝や激しい寝言は要注意
よく眠れない、疲れがとれないなど、年齢とともに睡眠の満足度が減ってきたと感じる人は多い。睡眠の専門家に伺うと、睡眠のとり方次第で健康寿命をも左右することがわかってきた。 【写真】閉経後の女性におすすめ!「睡眠時無呼吸症候群」チェックリスト 「世界で最も寝ていないのは、日本の50代女性です」 と話すのは、日本睡眠学会理事長の内村直尚先生。そもそも日本人の睡眠時間は世界で一番短いといわれており、世界の平均8時間25分より、1時間以上も少ないというデータもある。 「中でも50代女性の5割が、睡眠6時間以下。理由の一つは、日本ではいまだ、女性の家事の負担が大きいということです」(内村先生、以下同)
6時間未満の睡眠は死亡リスク大
厚生労働省が今年2月に公開した『健康づくりのための睡眠ガイド2023』で、20~59歳の成人は、6~9時間が適正な睡眠時間とされている。 「6時間以上の睡眠をとらないと、がんや生活習慣病、認知症になりやすく、死亡リスクが高まるというエビデンスが示されています」 さらに、更年期の身体の変化も、睡眠に影響を及ぼす。 「女性ホルモンのエストロゲンが減少すると、睡眠が阻害されたり、逆に我慢できないような眠気を感じたりします。さらに最近注目されているのが、更年期女性の睡眠時無呼吸症候群。 気道が狭くなることで睡眠中に呼吸が止まる状態が繰り返される病気で、睡眠が中断したり、浅くなり質が低下します。男性の病気のように思われていますが、実は閉経後の女性に多いのです」 その理由も、女性ホルモンの減少が関連している。 「女性ホルモンの低下とともに筋肉の緊張が緩み、気道が狭くなるので、閉経後の女性はいびきをかきやすくなります。さらに気道が完全に閉じてしまうと無呼吸に陥ってしまう。 睡眠は量だけでなく質も重要ですから、更年期の女性は特に、睡眠を阻害する要因に早めに気づき、改善していくことが必要です」
昼寝は短時間が有効。長時間とると死を招く
睡眠の質を上げるのに有効なのが“昼寝”。 「人間は体内リズムの関係で、午後2時~4時の時間帯は必ず眠くなります。しかしそれより前に短時間の昼寝をとっておくと眠気が軽くなり、パフォーマンスが上がることがわかっています。 さらに、昼寝が夜の睡眠の質を高めるというデータもあるので、上手に取り入れてほしいですね」 ただし、昼寝をする際に注意したいのが長さ。 「30分以内の昼寝はいいのですが、それ以上長く寝てしまうと、かえって眠気が後を引いてしまい、パフォーマンス低下につながります。さらに、60歳以上の方が30分以上昼寝をすると、認知症になりやすく、死亡リスクが高まるというデータも。30分以内にとどめるようにしてください」 短時間の昼寝でも、すっきり目覚めるために活用したいのがカフェイン。 「カフェインは、飲んでから20分後ぐらいに覚醒作用が現れるので、昼寝前にカフェインが入っている日本茶やコーヒーを飲んでおくと、ちょうど20分後ぐらいに目が覚めやすくなります」 また、睡眠の質を下げるNG行動といえるのが週末の寝だめ。 「週末だけ長く眠っても、日々の睡眠不足を補うどころか、逆効果に。例えば、寝だめしたいからと、起きる時間を普段より5時間遅らせると、身体は日本との時差が5時間ある外国に旅行しているのと同じ状態になります。 体内リズムが阻害され、その結果、週明けは時差ボケ状態に。これを“ソーシャル・ジェットラグ”といい、数日間は時差ボケの不調が続きます。どうしても長く寝たい場合は朝寝坊するのではなく、いつもより2時間程度早く就寝するのがいいでしょう」