強い口臭がある人は認知症を発症しやすい
重度の口臭がある人の認知症発症リスクは3.8倍
平均7.54年、1万5274人-年(*2)の追跡が終了した時点で、全体の6.4%(96人)が要介護認知症を発症していました。口臭のグループ別に見ると、重度の口臭が認められたグループでは20.7%、軽度の口臭があったグループでは5.2%、口臭なしのグループでは6.8%でした。1000人-年あたりの要介護認知症の発症率は、全体では6.29で、重度の口臭があった人では22.4、軽度の口臭があった人では5.1、口臭がなかった人は6.6でした。 年齢や性別、学歴、肥満の有無、持病(併存疾患)の有無、残存していた歯の数や1日の歯磨き回数など、口臭と認知症の関係に影響を与える可能性がある要因を考慮した上で、口臭がなかった人たちと比較すると、重度の口臭がある人たちの認知症発症リスクは3.8倍になりました。 強い口臭と認知症に関係が認められた理由について著者らは「強い口臭のある人は周囲から孤立しがちであること」のほか、「口臭を発生させる細菌が脳内の炎症や神経の破壊に関係する可能性」も指摘しています。今後さらに大規模な研究を行って、口臭と認知症リスクの関係を明らかにしていく必要はありますが、今回の結果は、口腔衛生に気を付けることで得られる利益は、思っていたよりかなり幅広いことを示しました。 *1 DSM Ho, et al. J Alzheimers Dis Rep. 2024; 8(1): 805–816. *2 人-年:追跡された人数と追跡された期間を掛け合わせたもの。1人を1年間追跡すると1人-年、20人を3年間追跡すると60人-年となる。 (大西淳子=医学ジャーナリスト)