強い口臭がある人は認知症を発症しやすい
重度の口臭がある人は、口臭のない人に比べて介護を必要とする認知症になるリスクが約4倍になることが、東京医科歯科大学などの研究グループによって明らかになりました(*1)。 ●強い口臭は社会的交流を妨げ、認知機能の低下を招く? 歯磨きや舌ブラシを使って歯と口の中を清掃することが、さまざまな病気の予防において重要であることは十分に知られています。その1つが認知症です。これまでに、残っている歯の数が多い人のほうが認知症のリスクが低いという報告や、アルツハイマー病と歯周病の関係を示した報告がなされています。 口腔内の衛生状態が認知症に関係する理由としては、「口腔内の慢性的な炎症や、咀嚼(そしゃく)による刺激の減少が、脳の神経系に悪影響を及ぼすことが一因ではないか」というものがあります。一方で、口腔内の衛生状態が悪く、残存歯数が少ない高齢者は、外出の頻度が低いという報告もあり、他者との交流の機会が減少するために認知機能が低下する可能性も考えられています。 今回研究グループが注目したのは、口臭です。口臭の90%は、口腔衛生が不十分であることや歯周病の存在など、口腔の問題に起因すると考えられています。そして、強い口臭は、高齢者の社会的交流の妨げになる可能性があります。社会的な孤立が高齢者の認知症の危険因子であるという報告に基づけば、口臭自体も認知症リスクの上昇と関係する可能性があります。そこで著者らは、日本の秋田県の住民を対象に行われている「JPHC研究」(Japan Public Health Center-based Prospective Study)のデータを使って、口臭と、介護を要する認知症(要介護認知症)の関係を検討することにしました。 対象としたのはJPHC研究の参加者のうち、2005年7月から2006年1月までの期間に歯科検診を受けており、2005年5月に口腔衛生に関する自己申告式の調査を受けていた56~75歳の1493人(平均年齢65.6歳、女性が53.6%)です。 歯科検診の際に歯科医が、対面で感じた口臭の程度を「口臭なし」「軽度の口臭」「重度の口臭」に分類し、記録しました。 介護を要する認知症の発症の有無については、2006年1月から2016年12月までの要介護認定情報を参照し、判断しました。