世界はまだ、真の「カツカレー」を知らない。その発祥から、進化し続ける“ネオ”な注目店まで解説!
カツカレーの最適解を追い求めて。“一期一会の美味”に驚愕!/東京・八丁堀「wacca」
続いては東京・八丁堀の話題店「Japanese Spice Curry wacca」だ。イタリアン出身のシェフ・三浦智輝さんはレシピを常にブラッシュアップしているため、メニューの内容も価格も日によって変動する。“一期一会”のカツカレー体験を堪能できるのだ。 「昨年、私が主催するイベントで初めてカツカレーを提供してもらったのですが、これが衝撃のうまさでした。日本のカレーはドロッと濃厚な口当たりで、カツの食感や味わいを覆い隠してしまいがち。そこで三浦さんは、ルーをとことんシャバシャバに仕上げたのです。おかげでブランド豚・東京Xを使ったカツのうまみがしっかりと舌に伝わってくる。ルーを支えるかつお昆布だしの風味も相まって、“揚げ出しトンカツ”を食べているような感覚に酔いしれました。ココナッツミルクを“使わない”グリーンカツカレーも最高ですよ。八方だしや野菜からなる、ごくミニマムなレシピと、揚げ油を使わずにフランス料理の調理法『アロゼ』で火入れしたトンカツのマリアージュ……。世界各国のカルチャーが一皿に凝縮されています」
石垣島のスパイスと洋食シェフ渾身のハンバーグが融合/東京・市ヶ谷「PAIKAJI」
最後は2024年8月、沖縄の石垣島から東京・市ヶ谷へはるばるやって来た新店「スパイス欧風カレー PAIKAJI」だ。 「PAIKAJI=沖縄八重山地方の方言で、『南風』という名のとおり、亜熱帯の香りを感じるカツカレーなんです。石垣島に自生する素材をふんだんに使っていて、島こしょう・ピパーツのスモーキーな刺激、島パイナップルのフルーティーな甘味がたまりません(仕入れの都合で海外産の場合もあり)。看板メニューの『PAIKAJIカレー』は、100人中99人が“大好き”になってしまう傑作。ルーは欧風で、石垣島でビストロを営んでいた洋食シェフ・戸塚勝敏さん渾身(こんしん)の洋風だしが下地となっています。化学調味料を一切使わず、4日間かけて作り上げる澄みきった味わいです。カツにも洋食ならではのテクニックが詰まっていて、なんとハンバーグを揚げているんです。これがもう、べらぼうにうまい。ザクッとナイフを入れると、赤身が残ったレアな断面からじゅわ~っと肉汁があふれ出して、カレーやライスに染み込んでいく。世のメンチカツとは一線を画するクオリティーです。昭和の時代に洋食屋から誕生したカツカレーが、令和の今、洋食の技によって、さらに自由に発展している。今後のネオ・カツカレーの可能性をも期待させてくれる一皿です」 古びぬ「元祖の味」から、常に進化し続ける「ネオな逸品」まで、カツカレーには「“日本ならではの何でもありな食文化”が詰まっています」とカレー細胞さんは熱く語る。洋食、だし、スパイス、全国各地の食材。歴史の中で培われてきたさまざまな要素が混然一体となって、スプーンの上で輝いている。“日本でしか食べられない”珠玉の一皿に、あなたもきっと、目を見開くはずだ。