「生理周期」に合わせて運動するメリット【専門家が解説】
自分の体の声を聴く
サイクルマッピングは、プロのアスリートではない一般の人たちにとっても有益。英陸上競技選手ジェシカ・エニス=ヒル監修のフィットネスアプリ『Jennis』は、生理周期のステージに応じてワークアウトのメニューを作ってくれる。このアプリの非プロアスリートユーザーを対象にロス博士がサイクルマッピングの調査を実施したところ、対象者は生理周期のステージに応じたワークアウトを好んでいた。 「当時のユーザーからは、(ワークアウトを生理周期に合わせることで)自分にやさしくなれたし、そのせいでフィットネスレベルが落ちることもなかったという声が多く寄せられました」とロス博士。「生理でワークアウトをスキップすることによるフラストレーションや、生理周期のステージに相応しくないトレーニングをしているのではないかという不安がなくなった分、対象者の不機嫌スコアも低下しました」 ロス博士は現在、英スポーツ科学研究所(EIS)の一員としてMint Diagnosticsのエンジニアとタッグを組み、アスリートの生殖ホルモンのバランスを手軽に測定するための唾液検査『Hormonix』を開発している。 「生殖ホルモンの変化はなにかしらの問題(オーバートレーニングや燃料不足など)を示していることが多いので、常にモニタリングしていれば、ケガや病気を未然に防ぐことができます」 とはいえ、生理に関する今日の研究はまったくもって不十分。ブルインヴェルス博士によると、黄体期のアスリートには生理関連の症状が最も現れやすい。にもかかわらず、スポーツ科学の研究では黄体期の重要性がとくに軽視されている。 この現状が変わることを望む一方でブルインヴェルス博士は、謎が謎のままで終わる可能性も理解している。「そもそも確実に答えが見つかるような研究分野はありません。それは研究分野がインターミッテント・ファスティングでも高地トレーニングでも同じです。私たち人間は個体差が大きく、その個体差には生理周期も含まれます」 モチベーション不足の原因が自分の性格ではなくホルモンにあるような気がする人は、サイクルマッピングを試してみるといいかもしれない。でも、生理と運動パフォーマンスには無数の要素が関係していて、そのすべてをテクノロジーで管理することは不可能。 だからこそ、ありきたりなアドバイスかもしれないけれど、自分の体の声に耳を傾けることが大切。