「生理周期」に合わせて運動するメリット【専門家が解説】
「サイクルマッピング」とは
生理周期のステージに応じてワークアウトの内容を変えることは、一般的に「サイクル(周期)マッピング」と呼ばれている。生殖ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの量は1ヶ月を通して増減するけれど、これが代謝や気分、活力に影響することもある。 サイクルマッピングは、生殖ホルモンの変動がどのような形で体に現れ、生理周期のどのステージで、どのような運動をすれば気分が改善するのか、を理解するうえで役立つ。フィットネスプログラムの多くは、このサイクルマッピングに従って、卵胞期(生理の初日~)にはウエイトリフティング、排卵期(28周期の14日目前後)にはHIIT、黄体期(排卵後~次の生理が始まるまで)にはピラティスを勧めているというわけだ。でも、実際そうするべきという科学的な裏付けはあるのだろうか? まずはホルモンの話から。「運動能力が生理周期に関連するホルモンの影響を受けないことは、これまでの研究から明らかです」とロス博士。これは意外。「今日リフティングで200kg上げられるということは、他の日にも同じことをするだけの筋力が備わっているということです」。南オーストラリア大学の研究でも、生理周期は有酸素系、無酸素系、筋力系のテストにハッキリした影響を与えなかった。 別の研究では、ホルモンの変動が神経筋機能や筋肉の発火速度(ジャンプ力、筋力発揮安定性、バランスなど)にも影響を与えないことが分かった。でも、生理の症状(腹痛による不眠など)がパフォーマンスに与える影響まではカバーされていなかったので、この点についてはさらなる研究が必要と言える。次にメンタル面のパフォーマンス。生理周期の特定のステージではワークアウトが辛く“感じる”と言うけれど? 2002年のデンマークの研究では、生理の直前と生理が始まってすぐの段階で参加者の出力(パワーアウトプット)が若干減少したけれど、研究チームいわく、その原因は生理学的な変化というよりむしろ心理状態の変化にある。確かに、気だるさ、疲労、痛みを抱えた状態で、最高のパフォーマンスを発揮するのは難しい。つまり、サイクルマッピングの目的は、生理中の運動パフォーマンスを上げることではなく、いつもと同じパフォーマンスを発揮できる状態を作ることにある。