アスリートを襲う破産の危機。横領問題で再燃した資金管理問題。「お金の勉強」で未来が変わる?
税理士がサッカー選手にコミットする理由
税理士である小池氏がアスリートの“確定申告屋さん“にとどまらず、キャリアサポートに力を入れるのには明確な理由がある。 中学3年の冬。自らもサッカーをプレーしていた小池少年は、全国高校サッカー選手権の決勝戦を観戦していた。 「高校受験を目前に控えた時期で、通っていた塾の先生に『この試合だけは行かせてください』と直訴して国立競技場に行ったんです。決勝のカードは前年まで2年連続優勝していて3連覇を目指していた国見と、多くのスター選手を抱える市立船橋。千葉生まれの私にとって、特に“イチフナ”は憧れの的でした」 歴史を見ても高校サッカーが注目を浴び、“選手権熱”が高かった時代。いても立ってもいられず駆けつけた国立競技場周辺は、当日券を求める人の列でごった返していた。 「当日券を買って、国立の中に入れたのは後半開始からだいぶ経ってからでした。ちょうど階段を上っていたときに、満員の大観衆がどよめいたんです」 市立船橋の先制点、選手権史上にも残る小川佳純選手の豪快なミドルシュートがネットを揺らした瞬間だった。 「あの瞬間を目撃できたことで、自分のサッカーへの思いはさらに特別なものになりましたし、優勝の瞬間は涙が出るほど感動しました」 高校までサッカーを続けた小池さんのプロサッカー選手という夢は断たれたが、税理士の職に就いた後も社会人サッカーチームの立ち上げや税理士会サッカー部に所属するなど、サッカーへの思い、プロサッカー選手への尊敬の念は消えることはなかった。
“衝撃ミドル”を放った憧れの選手との出会い
「税理士は、依頼人の税金相談だけでなく人生設計まで幅広くサポートできる存在。自分の職能をサッカー選手、アスリートのために使えるんじゃないかと思ったのです」 そう考えていたとき、とあるフットサルコミュニティで同じようにアスリートのキャリアサポートを志す保険代理店経営者に出会う。 「その人物から『兄がプロサッカー選手をしている』と聞かされました。なんとそれが、あの決勝でゴールを決めた小川佳純さんだったのです」 兄と同じくプロサッカー選手を目指していた小川直純氏は、「兄がいいものさしになった」と自身で語るように、大学在学中にプロサッカー選手への道を断念した。外資系生保会社、保険代理店勤務を経て、自身で保険の面からさまざまな人のライフプランをサポートする保険のエキスパートとして起業していた。 「小川さんとの出会いは、運命を感じました。まさか自分が憧れていた選手と、こんな形でつながるとは思ってもみませんでした」 兄である佳純選手は、当時すでにキャリア終盤を迎えていたが、法人化すべきかどうかなど、財政面に課題感を持っていた。 「直純さんの紹介で佳純選手にお会いできたときは『税理士になって良かった』と心から思えました。それと同時に、名古屋(グランパス)で10年近く主力として活躍した選手でも、法人化するかどうかというところで悩んでいるのかという驚きもありました」