アスリートを襲う破産の危機。横領問題で再燃した資金管理問題。「お金の勉強」で未来が変わる?
トップアスリートの光と影、今そこにある破産危機
複数のプロアスリートの税務顧問を担当し、近年ではアスリート有志による「お金の勉強会」の講師を務めている税理士法人プレアスの税理士の小池俊氏は、ビッグ・マネーを手にしたトップアスリートの破産についてこう解説する。 「一般的には『もう一生分稼いだはず』と思うかもしれませんが、規格外に稼ぐ選手は使う金額も規格外です。引退しても現役時代と同じ生活レベルを維持しようとする。収入が10分の1になっても経費を下げられない。そういった状況に陥ってしまうんです」 こうした状況は、トップアスリートに限ったことではない。むしろお金のことをほとんど考えず競技に集中している平均的なアスリートも含めた「すべてのアスリート」が直面する問題とも言えるのだという。 「たとえば、私が関わることの多いサッカー選手で言えば、プロサッカーリーグ、Jリーグ誕生から30年以上が経過しているにもかかわらず、多くのプロサッカー選手は『確定申告って何ですか? 売上って何ですか?』というところからのスタートです。本来であれば、アスリートは、自分という商品を扱う経営者のはずなのに、その自覚がある人は少ないのが現状です」 競技だけに集中し、資産形成や税務申告について学ぶ機会が少ないアスリートは、税金やお金の仕組みについて十分に理解しないまま現役を終えることも少なくない。例えば、税理士に確定申告を任せきりで、具体的にどのような経費が認められているか、どのように確定申告がなされているのかを把握していないことが多いのだという。 「税理士と直接顔を合わせることすらなく、領収書の提出や確定申告の処理を任せているだけというのが一般的ですが、税理士を確定申告だけをする“確定申告屋さん”として見てしまうと、資産形成や税金対策に関する有益なアドバイスが得られず、将来的に損をしてしまうことになります」
活躍するタイミングも不調もケガも予測できないからこそ
「Jリーグの平均年俸は約2000万円。仮に10年間現役を続けた場合、単純計算で2億円の収入となります。一方、日本人の平均的な生涯収入は、退職金を入れて約2億7500万円と言われています」 一見すると、10年で2億円を稼ぐJリーガーの方が稼いでいるように見えるが、Jリーガーの平均引退年齢は25~26歳。平均寿命が男女ともに80歳を超えていることを考えると、40年以上の長期にわたって安定的に収入が得られるビジネスパーソンに利がある面も多い。 「引退が見えてきて、セカンドキャリアの準備を真剣に考えるようになってから将来に不安を覚えるアスリートも多いのですが、現役時代に稼いだ収入をどう管理し、引退後の生活に備えるためにはできるだけ早く計画的に進める必要があります」 それまで出場機会を得られなかった選手が、トレーニングに励んだ結果、定位置を確保。爆発的な躍進を果たした。年俸も急激に上がり努力が報われたが、2年後にケガが原因で再びベンチを温めることになった。レギュラーから外れた翌年、収入が激減する中で多額の税金を支払うことになってしまった・・・・・・。 いつ活躍できるか、またいつ不調や負傷で稼げなくなるかも予測できないのがアスリートの資産管理の難しさだ。 「だからこそ、長い人生を見据えた資産形成が必要になるのです」