「潰瘍性大腸炎」の初期症状・前兆はご存じですか? 長期化すると『大腸がん』のリスクも
潰瘍性大腸炎になったら薬や手術で治療できる? 医師が推奨する食事メニューや食べてはいけないものも知りたい
編集部: では、実際に潰瘍性大腸炎と診断されたら、どんな治療をするのですか? 河口先生: 治療は基本薬である「5-アミノサリチル酸」(5-ASA)製剤をはじめ、ステロイド剤、免疫調整剤、抗体製剤、JAK阻害剤、カルシニューリン阻害剤、血球成分除去療法などの治療が保険適用となっています。 昔はこれらの薬がなかったので入退院を繰り返す方が多かったのですが、近年では薬の種類が増え、良好にコントロールできる患者さんが増えてきています。 しかし、それでも一部の患者さんには、重症例や難治例、がん(UCAN)を合併してしまうケースがあり、その場合は、大腸を摘出する手術が選択されます。 編集部: 薬で治すことができるのですか? 河口先生: この病気は、世界中でその原因が研究されていて少しずつ解明されてきているところはありますが、それでも現時点では「完治」させる方法が見つかっていません。治療は、なるべく炎症が出ないようにコントロールしていくのが目的となります。 病気はもっているけれど薬で炎症がコントロールされて症状が全く出ていない状態を「寛解」といいますが、できるだけ早く寛解の状態にもっていき(寛解導入)、その後なるべく長い間良い状態をキープする(寛解維持)というのが潰瘍性大腸炎の薬物治療の目標となります。 人によって、また、状態によって、薬の種類や量を調整しながら、症状の軽減を図っていきます。 編集部: 食事などの生活習慣についてはどうですか? 河口先生: 「寛解期」と呼ばれる、炎症が落ち着いている状態の時は、健康な方と同じような食事内容で問題ありませんが、「活動期」と呼ばれる、下痢や出血が続いている時期には刺激物(辛いもの・脂っこいもの・アルコール)は控えていただいています。 また、その方の体質によってはお腹を下しやすい食べ物や飲み物などがあると思うので、そちらも避けていただきたいです。炎症がぶりかえすことを「再燃」と呼びますが、再燃を予防するためには寛解期のうちから積極的に腸内環境を整えておくことも大切です。 例えば善玉菌は酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸を産生して腸の免疫機能を正常化させる働きがあることが知られていますが、これら善玉菌は食物繊維をエサにして短鎖脂肪酸を産生しています。 ですので、味噌や納豆やヨーグルトなどの「発酵食品」から善玉菌を補うとともに、善玉菌のエサである「水溶性食物繊維」を多く含む雑穀や芋類、野菜、果物などを積極的に摂ることは、腸管免疫をコントロールする上でも有用だと思います。 また水溶性食物繊維には便を固める役目もありますので上手に摂取することをお勧めします。 編集部: そのほかにも何かありますか? 河口先生: もうひとつ大事なこととして、腸の免疫には自律神経も深く関与しています。自律神経は、睡眠不足やストレスの影響を受けやすいため、これらが続くと腸の炎症も治りにくくなります。 ですから睡眠をしっかり確保したりすることやストレスがたまらないよう仕事を調整したりすること、運動や趣味などでうまくストレスを発散したりすることも腸にとってはとても大切なことです。 編集部: 最後にMedical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。 河口先生: 潰瘍性大腸炎の患者さんは、若い人を中心に、年々増えています。症状が出ている時期はとても辛く、また「完治」は難しいと聞くと暗い気持ちになったり、将来が不安になったりしてしまうかもしれません。 しかし今は良いお薬もたくさん開発されていますので、早期発見、早期治療で普通の日常生活は十分可能な疾患となってきています。 ですので、おなかの調子に不安のある方、とくに先ほどのチェックリストに当てはまる症状がある方は、IBDに詳しい内視鏡専門医のもとで検査を受けることをお勧めします。