だから「52歳現役」で今も日本トップ級…五輪8度レジェンドの"最高睡眠"できるフロ・メシ・寝具・エアコン
■老廃物を排出する3~5セットの交代浴 おかげさまで52歳になった今も現役。所属チームの監督を務める傍ら、今年2月には2年ぶりに国内大会で優勝しました。第一線で選手を続けていられるのは、睡眠で疲れをうまく取れているからかもしれません。 【図表】葛西紀明の脳と体に溜まった疲れを吹き飛ばす眠り方 実は30代前半まで、睡眠について強く意識したことはありませんでした。もともと僕は体力が溢れているタイプ。睡眠時間が多少短くなっても疲れを感じることはありませんでした。しかし、さすがに30代も半ばに差しかかると、20代のころと同じようにはいかなくなってきた。そこからしっかり眠ることを心がけるようになりました。 まずこだわっているのは寝具です。マットレスは凹凸がついたディンプル形状のものを使っています。スキージャンプで大切なのは首、背中、腰です。このラインが硬くなるとジャンプのアプローチの姿勢がうまく組めません。ディンプル形状のマットレスは体の圧を分散してくれるので、どこかの部位に負担がかかるのを避けられます。 同じ理由で枕も厳選しています。合わない枕を使うと首が上がりにくくなり、それだけでアプローチの目線が変わってしまいます。調子を崩すきっかけになったこともあるので、硬めで小さく、首にフィットしてしっかり支えてくれるものを愛用しています。 寝間着は、おなかと腰に磁気が入って血行を良くするリカバリーウエアです。3年ほど愛用していますが、ただのTシャツ短パンで寝ていたときより調子はいいですね。 寝具一式は遠征にも持っていきます。海外のホテルのマットレスや枕は、僕には柔らかすぎるので、自分の寝具が欠かせません。マットレスは丸められるので海外にも簡単に運べるし、陸続きのヨーロッパを転戦するときは車で移動するので問題なし。遠征時の大事なお供です。 海外遠征で困るのは、お風呂。ヨーロッパのホテルはバスタブがないホテルも多いのですが、寝る前はじっくりお湯に浸かりたい。日本から入浴剤を持っていき、バスタブがある部屋ならここぞとばかりに1時間~1時間半くらいじっくり入ります。 普段も長風呂ですよ。ずっと浸かっているとのぼせるので、十数分浸かったら水を浴びて体を冷やし、また湯船に入る。サウナと同じ交代浴です。それを3~5セット繰り返します。 寝る前に長風呂したり、サウナに入る最大の目的は汗をかくこと。実際にそうなっているのかはわかりませんが、汗をかくと一緒に老廃物が出ていくような気がしてスッキリします。心地よい疲れとともにベッドに入れます。 意識的に汗をかくようにしているのは減量のためでもあります。スキージャンプは基本的に体重が軽いほうが有利です。なかには既定の体重より痩せすぎていて増量しなければいけない選手もいますが、僕も含めてたいていの選手は普段から減量に取り組んでいます。体重を適切にコントロールするのに、お風呂はもってこいです。 夕食は食べません。もともとは減量のために始めたことですが、これも深い睡眠に役立っているかもしれません。普段は朝にご飯やパンでエネルギーを摂って、お昼は野菜サラダだけ。シーズン中、さらに減量が必要なときは朝食も抜いてブラックコーヒーだけにします。正直、たまにお腹が空いて寝る前に冷蔵庫を開けたくなるときもあります。ただ、食欲よりも、勝ちたい気持ちのほうがずっと強い。おかげで空腹でも寝られる体になりました。 寝室の温度は低めに設定しています。僕の出身は北海道下川町。冬はマイナス30度になる極寒の地です。裕福な家ではなかったので、暖房は灯油ストーブではなく薪ストーブでした。薪ストーブは寝ている間に火が消えるため、明け方は外とほとんど変わらない室温になります。寒さをしのぐため、ずっしり重い布団にくるまって寝ていました。それが体に染みついているんでしょうね。今でも寒い中で布団の重さを感じながら横になったほうがよく眠れます。