羽毛を使わないダウンジャケットの衝撃!住友金属鉱山の「SOLAMENT®」が描く洋服の未来とは
ファッション業界において、これほど衝撃的な衣服を見たことがあるだろうか。ダウンジャケットと称しながら、ダウンを一切使っておらず、そのうえ、すばらしい発熱・保温機能を有しているのに、一切の色を排除したデザインによるダウンジャケット。まるで未来からやってきた衣服のようだ。 この目を奪われるデザインを可能にしたのが、住友金属鉱山株式会社が開発した「SOLAMENT®(ソラメント)」だ。 この不思議なアイテムの秘密を探るべく、同社機能性材料事業本部で「SOLAMENT®」のプロジェクトリーダーを務める石橋佳祐さんにお話を伺った。
近赤外線を利用する「SOLAMENT®」とは
ーまずは、事業内容を教えてください。 弊社は、1590年に銅製錬の事業から始まった会社です。その後、1691年に愛媛県にある別子銅山の開坑を機に、製錬事業から資源事業を合わせて行う形へとシフトしていきます。 基本的には鉱山から鉱物を採掘し、それを工場で製錬して加工しやすい形に変えていきます。その過程で、金属をより細かい粉にする技術の開発を進めてきました。この技術は、現在電気自動車やハイブリッド車に欠かせないニッケル系正極材料やインク材料のナノ粒子などに応用されています。 「SOLAMENT®」を手掛ける機能性材料事業は、こうした金属加工の技術を化学品に応用する部署です。
ー「SOLAMENT®」とは、どのようなものでしょうか。 こちらは、太陽光に含まれる近赤外線を吸収し、素材自体が発熱する金属化合物です。もともとは「近赤外線吸収材料(CWO)」として販売していましたが、昨年の10月にその特徴を効果的に伝えられるよう「SOLAMENT®」としてリブランドしました。 ーどういった機能を持つ素材なのでしょうか。 いくつか機能を有しているのですが、「SOLAMENT® for HEATING」と「SOLAMENT® for HEAT BLOCKING」があります。 たとえば、窓ガラスに「SOLAMENT®」を塗ったとします。すると、太陽の近赤外線を吸収して、そこで熱が食い止められます。その結果、熱が室内まで届かなくなるので、夏場であれば、エアコンの設定温度をそこまで下げなくてもよく、環境への負荷を軽減できます。 この熱を吸収するという点に注目して、アパレル衣料に用いれば、冬場は非常に暖かく感じる商品を生み出すことができます。従来は人体の体温を保持して体感温度を高めるものが一般的なのですが、「SOLAMENT®」は熱を太陽から得るので、これまで以上に暖かさを感じられるものができると思います。