「新1年生の命を奪わない運転を」専門家が語る“構えブレーキ”と“予測ブレーキ”の重要性
警視庁では、令和5年度の交通安全運動として「TOKYO SAFETY ACTION」を呼びかけている。平成30年から令和4年の都内歩行者の年齢別死傷者数は、7歳が475人で最多。これは小学生になったばかりの新1年生が、登下校の際に交通事故に遭ってしまった結果と考えられる。「子どもの動きは予測できないことを理解して、ドライバーは子どもを守る運転をしなければならない」と日本事故防止推進機構理事長の上西一美さんは語る。どうすれば不幸な事故を防げるのか、上西さんに話を聞いた。(Yahoo!ニュース Voice)
低学年の子どもは危険感受性が低いから、大人の想像を超える行動をしてしまう
――過去5年間の交通事故の年齢別死傷者数で7歳が最多となりましたが、何が理由なのでしょうか。 上西一美: 私はもう毎年、5月に子どもの事故が多いから運転には注意をしてくださいと言っています。なぜ5月なのかというと、多くの小学校で集団登校と集団下校をやっていると思いますが、その集団下校が4月で終わるんです。時間帯別では15時以降の事故が多いというデータもありまして、その時間に自由に動く子どもが多くなるということで、危険感受性の低い、特に小学生の低学年なのですが、飛び出しとかの被害に遭ってしまうのかなと思いますね。 子どもの危険感受性が低いということは、僕ら大人とはまったく違う判断基準を持っているということなんですよね。僕らが想像するのと同じような動きを絶対にしてくれません。運転者の想像を超えるタイミングで、信号無視をいきなりしてくるとか、通常大人ではやらないような動きをするのが、子どもの特徴ですね。だから運転手としては、その動きを予測して、「子どもを守るような運転」をしなければなりません。
時速30キロ以上で車が歩行者に衝突すると死亡率が急激に上昇する
――学校の近くや住宅街で「ゾーン30」という標識を見かけますが、これは何でしょうか。 上西一美: 基本的に道路は、一本ずつに制限速度を設けていくんですけど、「ゾーン30」というのは、そのエリアごと30キロ制限にしています。そして、この“30キロ”というところがポイントなのです。 時速20~30キロで車と歩行者が当たった時の死亡率が0.9%と言われています。これが30~40キロに速度が上がると、2.7%になるんですね。ということは、人の命を奪う可能性が3倍高くなります。つまり30キロ以下で走っていれば、万が一、子どもが飛び出してきても死亡率を極端に下げることができます。そういう意味でゾーン30という規則が決められているんですね。