「失われた30年」は日本人の寝不足も原因?睡眠研究の世界的権威が教える「良質な睡眠の基本」とは
■ 量は質でカバーできない 良質な睡眠をとるために意識しなければならないのは、“睡眠の量”であると柳沢氏は語る。 「睡眠の質がよければ、時間は短くても大丈夫」と言う人がいますが、これは誤り。量は質でカバーできません。 1日のうち、仕事や家事、自分の時間を確保してから、残されたわずかな時間を眠りにあてる。こうした考えでは睡眠不足に陥るのは当たり前です。良質な睡眠はまず量が重要。まずは睡眠時間を最優先で確保することが大切です。 もちろん加齢とともに減る睡眠時間を無理やり増やそうとするのは、逆に不眠につながりかねないため注意が必要だ。しかし現役で働く世代であれば、ある程度のまとまった睡眠時間を確保できるよう工夫しよう。日々の睡眠状況と身体のコンディションを記録し可視化。週の合計睡眠時間を増やせるよう、毎日の睡眠時間を少しずつ増やして調整してみるのがおすすめだ。 ■ 光と音、室温を意識して睡眠環境を整える 睡眠の質を高めるためには、眠る環境を整えることも大切である。柳沢氏によると、睡眠の質を保つには光、音、温度の3つの要素を意識するのが効果的だという。 例えば明るい光には覚醒作用があるため、夜間はなるべく間接照明などを利用。就寝時には豆電球をはじめとする常夜灯もできる限り使わず、真っ暗な状態を作るのが良いとされている。また人の話し声にも覚醒作用があると言われているので、静かな環境で眠りにつけるよう工夫しよう。 加えてエアコンなどを活用し、快適な室温を朝までキープするのも睡眠の質の向上に役立つ。冬は部屋の温度が19~22℃、夏場は23~26℃ほどになるように調整。さらに自身がリラックスできる空間を作るため、観葉植物やルームフレグランスといったアイテムも活用してみよう。
■ 夕食は就寝時間の4時間前までに ベッドルームを整えるだけでなく、寝る前の習慣についてもあらためて見直す必要がある。柳沢氏曰く、寝る直前に食事をとったり、カフェイン入りの飲料を摂取したりするのはNG。夕食は就寝時間の4時間前までに終わらせ、午後6時以降はコーヒーなどを飲まないよう気をつけると快適に眠りやすくなる。 また入浴は寝る1~2時間前に済ませておくのも重要だ。人間は身体の深部体温が下がってから眠気が起きやすい。入浴後に深部体温が低下したタイミングと就寝時間を合わせることで、スムーズに入眠できるだろう。 睡眠は、忙しい日本の現代社会で何かと優先順位を下げられがちだ。仕事や家事を行って残された時間を睡眠時間にあてるのではなく、計画的に睡眠時間を確保するところから始めてみてはいかがだろうか。
東野 望