ベンチ1台400万円! 渋谷区113億円公園整備、本当に必要? 公共空間の商業化が浮かび上がらせる深刻問題とは
デザイン重視の課題
さらに、日本財団と連携して進められているTHE TOKYO TOILETプロジェクトは、渋谷区のデザイン重視のアプローチを示す一例である。 このプロジェクトでは、著名な建築家やデザイナーが新しい公衆トイレのデザインを提案することを目指していた。しかし、実際にはそのデザインが機能性に関して課題を抱える結果となった。 特に、建築家の坂茂によってデザインされた「透明トイレ」は注目を集めたが、実用性の面で問題が発生した。このトイレは普段、全面が色の付いたガラスで中が見える設計となっており、施錠をするとガラスが通電して曇りガラスに変わる仕組みだった。 しかし、冬の気温低下により、曇りガラスに変化するまでに時間がかかることが判明した。これに対して、自動で通電を制御する装置が導入されたが、期待通りに機能せず、最終的には冬季には常時通電して曇りガラス状態にする運用が取られることとなった。 また、その他のトイレについても、建築家の個性が強く反映されたデザインが多く見られ、将来のメンテナンスに対する懸念が残る。
大資本優先のPark-PFI問題
より深刻なのは、渋谷区がこうした批判の本質を理解していない点である。 この背景には、2017年に改正された都市公園法が導入したPark-PFI(公募設置管理制度)が関与している。この制度は、公園内の施設設置や維持管理を民間企業に委託し、財政負担を軽減することを目的としている。 当初は、既存の都市公園に飲食店や売店を設置し、周辺施設を一体的に整備することが期待されていた。しかし、実際には、公園を 「収益を上げる場所」 にしようとする動きが目立っている。その結果、公園本来の ・自然 ・憩いの場 としての機能が犠牲になっている。特に渋谷区は、このPark-PFIを積極的に導入した自治体として注目されており、公園内に商業施設が増加することが、公園本来の機能を損なうとの意見が出ている。 結局、Park-PFIの仕組みは、公園を民間企業が利益を得る場所に変えることを目的としている。利益を得るのは大資本であり、多くの都市公園では、公費で整備された後に、ナショナルチェーンのカフェが低い賃料で進出し、地元の中小企業に影響を与える状況が生じている。 東京都が進めている日比谷公園の再整備でも、イベントスペースを増やして利益を上げようという民間事業者の意向が反映されすぎているという問題が指摘されている。 こうした状況ので、「地域のさまざまな活動ができる広場」などといった言葉で進められる公園の再整備計画が、商業的な目的に偏っているのではないかという疑念が生じるのは自然なことだ。しかし、渋谷区は、公園の再整備に対する商業主義的な懸念を十分に理解していない可能性がある。